70周年を迎えた鎌倉彫刀華会の会長を務める 和田 冨岳さん(本名:和田冨士子) 長谷在住 80歳
鎌倉彫と生きた半世紀
○…創立70周年の節目を迎えた鎌倉彫刀華会の3代目会長として、初心者から専任教授と呼ばれる講師まで、約250人の会員をとりまとめる。現在、鎌倉芸術館で開催中の記念展では、技術とこだわりの詰まった300点近い作品が並ぶ。「刀華会は後藤流、三橋流の技法を学んだ後に、自分なりの工夫を凝らした我流で創作できる自由度の高い会です。同じ木地でも、伝統的な柄や近代的なデザインなど、それぞれの個性が出るのが面白いですね」
○…茅ヶ崎市出身。刺繍や編み物など、細かな作業と物づくりが好きで、高校卒業後は洋裁の学校へ進学。結婚を機に長谷に移り住んだ。鎌倉彫との出合いは30歳の時。刀華会の初代会長だった義姉に勧められ、やってみたところ「その面白さにどっぷりはまった」。技術を真剣に学ぶため、ほかの趣味はやめ、鎌倉彫に専念。「彫刻刀の研ぎ方、直線の彫り方から始め、彫りや塗りの技術を一通り習得するのに10年はかかった。本当に奥が深いです」
○…椀や皿といった身近な実用品だけでなく、硯箱など、いわゆる「伝統工芸品」作りにも挑戦してきた。「1996年に初めて伝統工芸新作展で入選した時は、本当にうれしくて」。気が付けば学び始めて半世紀。それでも「まだまだ『終わり』はない。今なお飽きることのない魅力がある」と目を輝かせる。
○…「服や宝石よりも漆や木地がほしいと思うくらい鎌倉彫が好き。理解ある家族、親しく時には手本となる仲間にも恵まれた」とほほ笑む。会長になっても間もなく20年になる。「忙しいけれど、それが元気の秘訣なのかもしれない。家族にも鎌倉彫のおかげだろうねと言われます。本当に幸せな人生を送れたとつくづく思いますね」