大船のコワーキングスペース「はじまる学び場。」を運営する 山田 美奈都さん 37歳
子どもに向き合い続ける
○…大学生だった16年前。教育実習先の中学校で、そうじをしない男子生徒に女子が腹を立てていた。その様子を見かね、注意しようか迷った末に男子生徒を怒った。実習生ながら初めて生徒を叱責し、職員室へ戻ると涙があふれた。するとその生徒が顔をのぞかせ、「先生ごめんね」とポツリ。さらに涙腺が緩んだ。「この時に、子どもたちとはとことん向き合おうと決めたんです」
○…父親が経営する専門商社を継ぐため、今春に教職を退いた。商社の社員として働く一方、子どもたちの学び場にもなりうるコワーキングスペースを、今夏に大船でオープン。社会人が仕事の拠点として利用するのに混じり、中高生や大学生も自習場所として使っている。高齢の父を思いやり教育現場は離れたが、学校ではできないことをここで実現しようとしている。「受験で高校生は大学生の意見を聞けた方がいいし、就職に向けて大学生は社会人の様子を知れた方がいいと思うんです」。多世代が交流できるワークショップも毎週実施。横浜市栄区でともに暮らす小学5年生の娘も、コワーキングスペースに来るのがマイブームだという。
○…横浜で生まれ、本人曰く「冷めた」学生時代を送った。周りに合わせ、当時流行したルーズソックスを履き、カラオケでは浜崎あゆみの曲を歌った。大学では日本文学を専攻し、「とりあえず国語の教員免許をとっとこうかなと。将来の夢は専業主婦でしたから」と一笑する。ところが、教職過程で冒頭のシーンに出くわし、人生が変わった。
○…「現在の教育は、『学校』か『家庭』の2択。ほかにも子どもが学べる場所があってもいい」。子どもから大人まで、地域の人が集う空間を創ることが今の夢だ。