世界遺産「落選ショック」をまちづくりの力にデスク・レポート

社会

掲載号:2013年5月17日号

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▼「残念だけれど、ほっとした」。世界遺産落選のニュースを聞いた鎌倉市民には、こうした感想を持つ人が多かったように思う。負け惜しみではなく、世界遺産への登録は市民に不安も少なくなかった。その原因の一つが交通問題である。天然の要害であるがゆえに、日本初の武家政権が誕生した鎌倉。その地理的制約から、現代を生きる私たちも逃れることはできない。週末や祝日になれば幹線道路はもちろん住宅街にも車が流れ込み、市民生活の質を大きく損なっている。一方で道路の新設や二車線化なども難しく、根本的な解決策はなかなか見えない。加えてゴミ問題に対する懸念も強かった。鎌倉では2年後に今泉クリーンセンター(焼却場)の閉鎖が決まっている。市は個別収集の導入による排出量の削減などを検討しているが、こちらも解決策とは言いがたい状況だ。「世界遺産になれば今以上に観光客が押し寄せるはず。渋滞はひどくなり、ゴミも増えるのではないか」。こうした市民の不安は当然のものだ。

▼このほど示されたイコモスの評価で鎌倉は4段階の最低ランクだった。構成資産周辺の「都市化」に対する懸念はもちろん、地震をはじめとした災害対策の不備が指摘された、という報道もある。勧告は図らずも鎌倉が抱えるまちの問題点をするどく指摘することとなった。

▼ただ「まさか」の低評価は市民の郷土愛を大きく揺さぶったようだ。編集室への投書には「登録されなくても鎌倉の魅力は変わらない」のほか「改めて歴史を勉強している」といった意見も。そこで「落選」を受けた市民のまちへの関心の高まりを、多様な課題について市民レベルで考える機会につなげられないだろうか。交通問題では、以前から検討されている自動車の流入規制の拡大や、渋滞税の導入、徒歩や自転車を利用し農業体験などと組み合わせた「エコツーリズム」の推進も面白い。ゴミ問題や災害対策、高齢化対策では世界遺産登録で協力した神奈川県、横浜市、逗子市などと連携できないか。横浜市では官民一体となったごみの排出削減に成功した事例もある。今こそ過去から引き継いだ遺産ではなく、未来へ向けたまちづくりで、世界へと誇れる鎌倉を生み出すチャンスだ。
 

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