江戸時代中期に廃れたとされる、鎌倉の「たたら製鉄」。その謎を研究し続けている県立鎌倉高校科学研究会はこのほど、海岸で採集した砂鉄を材料とした短刀の制作に成功した。短刀は来年1月1日から靖国神社遊就館の奉納新春刀剣展で展示される予定。
たたら製鉄は木炭の燃焼熱で砂鉄を精製する日本古来の製鉄方法。鎌倉で中世以降に行われていたが、江戸時代中期以降、急速に衰退したと伝わっている。
同会は2011年から「鎌倉のたたら製鉄」をテーマに研究を開始。鎌倉の砂鉄から鉄を精製する実験を繰り返しながら、衰退の原因解明に取り組み、13年には「鎌倉は沿岸部であるため砂鉄のカルシウム含有量が多く鉄の密度が低く、山間部のものに押され衰退した」との結論を出した。
14年からは質の良い鉄の精製実験に着手。砂鉄の成分分析を進め炉の改良を行い、日本刀の材料になる純度の高い「玉鋼(たまはがね)」の精製に成功している。
刀工に制作依頼
昨年の同高同窓会誌に研究成果を掲載したところ、卒業生から刀工・森光廣さんを紹介された。
「鎌倉の砂鉄からは日本刀は作れないという古くからの説を覆したかった」と同会は3月に森さんの工房を訪問。3kgと5kgの精製した鉄を渡し、刀剣の制作を依頼した。その後、市内の研師・本阿弥家の戸村厚之さんによる仕上げを経て、11月末に完成した短刀が高校に届けられた。
短刀は刃渡り25・7cm、重さ180g。柄部分には「以鎌倉砂鉄」と記されている。この短刀は1月1日(祝)から13日(土)まで、新作刀剣が披露される靖国神社遊就館の奉納新春刀剣展で展示されるという。
今回短刀を作る過程で炭素量の少なさが課題として浮かび上がったといい、今後は製鉄段階での炭素量の調整に挑戦する予定だ。金井瑠偉部長は「完成して達成感がある」とし、顧問の木浪信之教諭は「次の段階として、砂鉄の選考を磁石ではなく重さでやるなど当時の製鉄状況の再現もしていければ」と話している。
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