20周年を迎えた「鏑木清方記念美術館」の館長 真室 佳武さん 西鎌倉在住 80歳
名画で心に潤いを
○…4月17日に開館20周年を迎えた「鏑木清方記念美術館」の館長を務める。日本を代表する美人画家として知られ、晩年を雪ノ下で過ごした清方の旧居跡に建設された同館。「天才的な観察力で、江戸、明治期の女性の美しさを気品良く描いている」数々の作品を楽しもうと、国内外から年間約2万6000人が来場している。「長年にわたり多くの人に支えてもらえて嬉しい」と語る。
○…香川県に生まれ、「絵を描いているときが一番幸せ」と言うほど創作に夢中な幼少期を過ごした。絵画の道を志し、東京藝術大学に進学すると、制作技術のほか、特にフランスの美術史について学んだ。「高校時代から、人間味溢れる男女の描き方が美しいフランス映画が好き」で、同国の文化に興味を持ったのがきっかけという。卒業後も「芸術の都」への憧れは強く、31歳から3年間、パリ大学へ留学。描画、彫刻から言語、日常生活のマナーまで幅広く学ぶ日々を過ごした。
○…帰国後は群馬での学芸員を経て、東京都美術館に職を得る。58歳からは館長を務め、世界中の絵画との出合いを提供し続けている。「名画に囲まれる非現実的な世界に浸ることで、来館者の生活に潤いをもたらすことができれば」。長年の運営手腕を生かしてほしいと打診を受け、鏑木清方記念美術館の館長となって12年。その思いはいまも変わらない。
○…鎌倉山や由比ガ浜海岸などを散策するのが好きで、1日1万歩を目標に歩く。「作品の搬入や展示など、美術館の仕事は意外と体力を使う。健康づくりを続けて館長職に生かしたい」。今後「出張展示なども通じ、清方の魅力を広く発信していきたい」と言う。名画と人との架け橋となり、観る者の心に豊かな色彩を描き続ける。