神奈川県議会議員 岩本一夫の 見聞(けんぶん)検分(けんぶん)㉕ www.iwamoto-kazuo.biz目と耳でしっかり確かめてから、考える。
故郷の文化・歴史の継承は?
「茅ケ崎館」は明治32年創業、茅ヶ崎市中海岸に建つ海浜旅館。映画監督小津安二郎が『父ありき』、『晩春』等多くの作品を執筆した定宿として有名である。
また現在の高砂緑地は日本化薬会長、故原安三郎氏の別荘を市が買い取ったものだが、それ以前はオッペケペー節で著名な川上音二郎・貞奴夫妻の住居であった。川上は明治36年、東京明治座で本邦初の「女優貞奴」の誕生となる「オセロ」を上演する。この時稽古場として使われたのが何と!「茅ケ崎館」なのであった。茅ケ崎館と音貞の間に、日本の演劇史上重要な事件が絡んでいた事に、驚きと共に新たな茅ヶ崎のお宝を自慢したくなる思いだ。
昨年、茅ヶ崎美術館が「音二郎没後100年・貞奴生誕140年記念展」を開催するにあたり、小川稔館長が「江見水蔭翻案・川上音二郎演出・正劇オセロ」の台本を探し出した。そして今年10月14日、私も参加する市民劇団・湘南座が茅ケ崎館で朗読劇としてオセロを上演した。音二郎が演出、貞奴らが稽古をしていた時に、百十年後の同じ場所で、未来人が同じオセロを上演するとは、夢にも思わなかっただろう。私たちも川上版オセロの存在など考えた事も無く、正に感無量であった。こうして時空をゆがめる作業こそ文化の継承なのだと改めて考えさせられた。音二郎は47歳で没するがもう少し健在であったなら、彼の念願であった日本初の演劇学校が茅ヶ崎に創設されていただろう。
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