里山公園谷の家(やとのいえ)で季節ごとに切り絵を展示している 小清水實(みのる)さん 今宿在住 68歳
里山風景 切り絵で
○…「細かいのは苦ではないです。忍耐と根気に尽きますから」。県立茅ケ崎里山公園で、2カ月に1回ペースで谷の家に切り絵作品を展示している。30度の鋭角デザインナイフ1本で、1日2時間、1作品に約10日間かけ、縁起物から里山の季節風景まで温かくそして繊細なタッチで仕上げる。
○…生まれた小田原で学生時代を過ごし、土木系の高校に進学。その技能を活かし、卒業後は神奈川県職員となり土木事業を多数手がけた。現場はもちろん、予算が何千万にも及ぶ設計やデスクワークも山積みで、繁忙期は徹夜続きだったという。「忙しさのあまり30代半ばで精神的スランプになってね」。そんな時ふと切り絵展示会を目にし「自分にもできるかもしれない」と直感、同時に「これなら静かな時間の中で没頭できる」と思った。
○…定年退職後、宮ケ瀬ビジターセンター等の再雇用職員を経て里山公園勤務に。自然に囲まれたその環境は切り絵の題材が溢れており、しばらく遠のいていた情熱に火が点くのに時間はかからなかった。折しもその頃身体を壊し、リハビリにも良いことが後押しし、再開の機は熟した。制作を続けていくと、一緒に働く職員から「作品を展示したら」と声が掛かった。谷の家では展示の変化に課題を抱えていたこともあり、試しの気持ちで承諾。66歳で展示デビューとなった。
○…「本当は公園の退職と同時に切り絵の引退も考た。谷の家では次々と色んな方の芸術作品を展示するのが理想ですから。でもそれが実現するまで、『自分もやってみよう』と思っていただける作品になるよう腕を磨き、1つでも多く市内にある題材を見つけたいです」。家では4人の孫を可愛がるおじいちゃんで、先日切り絵を教えたとのこと。熱意のあまり秀作が出来上がってしまい、「『本当に自分で作ったの?』と学校の先生から怪しまれちゃったみたい」とはにかんだ笑顔で明かしてくれた。
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