第58回茅ヶ崎市畜産共進会「肉豚の部」で優秀賞を獲得した 岡本 敏明さん 堤在住 65歳
茅ヶ崎と豚を愛して
○…「1頭1頭、顔が違うよ。優しい表情の豚(こ)も強そうな豚(こ)も300頭みんな可愛い」。自宅敷地内にある現在4戸となった豚舎でブランド豚「やまゆりポーク」を育て、共進会で最高賞を受賞した。40年間の養豚を「日々の努力が認められた思うと嬉しいね」と親しみやすい表情で語る。
○…生まれてから現在までずっと堤の実家で暮らしている。小出小・中に通い日大藤沢高を経て、日大農獣医学部食品経済学科では流通や市場に関する学業を修めた。「いつかは家業を継ぐだろうなと思っていたけれど、一度はサラリーマンを経験したくて」。意を決し、養豚を創業した父に心境を打ち明けた。「妹と弟がいる長男だったけど、自由にしてくれた」と感慨深そうに当時を思い出す。市内の菓子会社に就職し、企画・製品開発を担当した。
○…「サラリーマンで経験したことは、時間で働くということ。まあ、大変だったけど」と笑顔。何事も楽しもうとする意欲が伝わってくる。東京転勤も契機となり退職し、家業を継ぎ2代目として走り出したのが25歳だった。「有難いことにみんな応援してくれた」。市内の養豚仲間と勉強会に励む日々。「種豚」を育てる繁殖分野では全国を飛び回ることもあった。「あっちに良い豚がいると耳にしては昼夜問わず駆け付けた。あの頃は市内で15軒以上養豚農家があったけど」と瞳の奥は悲しそう。現在、市内の養豚農家は3軒のみとなってしまった。
○…65年も茅ヶ崎を見てきた。「映画館が出来た頃は何度も行っちゃった」と少年の様な表情から、妻と娘に加えポニーやアヒルなど自然に囲まれてきた日々が感じられる。近所でサークルを起こしたこともある趣味の社交ダンスは、なんと20年の経歴だ。好きな食べ物は「もちろん豚肉。脂の色と甘みを堪能できるバラが一番」と話しながら「甘い物もね」とはにかむ。豚を育てるプロは、味覚の専門家でもあるようだ。
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