2013年度唯一の優良認定農業者に選ばれた 石坂 豊治さん 浜之郷在住 60歳
「心の栄養」を届けたい
○…創意工夫ある経営目標を掲げる農業者を支援する認定農業者制度。そのなかで特に優れた成果を残したとして、10月に県から今年度唯一の優良認定農業者に選ばれた。「地域園芸の活性化などの取り組みも含めて評価され、素直にうれしいです」とはにかむ。
○…浜之郷で生まれ育った。「松並木から見える富士山がきれいでね」と今はない風景を懐かしむ。切り花を営む園芸農家・石坂園の長男として、幼いころから花の鮮やかな色味やかぐわしい香りに魅了された。鶴嶺小学校4年時に書いた文集では、将来の夢を「立派な花をつくる専門家になりたい」と宣言。その夢は歳を重ねてさらに加熱し、鶴嶺中学校を経て平塚農業高校で園芸を学んだ。そして卒業後、鉢物栽培を学ぶため市内中島の横山花園へ修行に出た。そこで受けた教えと、寝食を共にした仲間たちは大きな財産だ。「横山門下生で”鉢物クラブ”を結成し、今も集まって情報交換や農園視察を行っています。彼らのおかげでここまでやってこられた」と周囲への感謝を忘れない。
○…学生時代はバスケットボールに熱中し、高校時代は副部長を務めた。「二番目の立場が似合うんですよ」と控えめな面持ちだが、大会で最優秀選手に選ばれた実力の持ち主だ。花も同じ。今回の認定に「私でいいのかと思った」と顔を赤らめ謙遜するが、イソトマやシクラメンなど数々の栽培や新品種開発を成功させてきた。「試行錯誤を経て、思い通りの花が咲いたときの喜びは代えがたい」と言葉に力が入る。心底、花が好きなのだ。
○…家族の存在が支えになっている。重労働をともにしてきた伴侶への感謝は深く、孫の話になると目を細める。今後は後継者の長男をサポートしながら、一鉢一鉢と向き合う時間を増やす予定だという。「花を見て腹を立てる人はいない。花は心の栄養ですから」。”栄養”を町に届けるため、今日も手を動かし続ける。
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