「この絵、歌川国貞が描いたものじゃないかしら。そうだとすると、この横綱は阿武松(おおのまつ)部屋の緑之助だわ―」。市内赤羽根在住の小笠原紗恵子さん(75)は、所有する相撲絵の作者や描かれている力士を自分なりの解釈で探し当てたという。
介護や看病でパニックに
小笠原さんは生まれも育ちも赤羽根。実家の蔵には多くの古文書類が保存されていた。「幼い頃、悪さをして蔵に閉じ込められたことがあったの。その時に古文書を見て幼心に『いつか読めるようになりたいな』と思ったわ」と小笠原さん。学生時代に歴史を専門的に学ぶことはなかったが、40代頃から歴史に関する書物を読み、調べることが趣味になった。「弟が大怪我を負って亡くなってしまって。すごくショックだった。それから母の介護が始まり、障害をもった弟の世話、さらに夫が病気になって。私、パニックになってしまったの。少しの間だけでも現実逃避したくて、たくさんの本を読んだわ」。当時を振り返る小笠原さんの瞳は悲しげだ。そんな折、兄や近所の寺の住職が全国各地の巡礼詣りに誘ってくれた。坂東三十三、秩父三十三、四国八十八、遠江三十三、西国三十三を巡り、順路の途中にある骨董店を訪れることもライフワークになっていった。これまでに書画や置物など複数の骨董品を購入。それが「いつ・誰が・どうして」作ったかを自分なりに探り当てる過程を小笠原さんは「謎解き」と呼んで楽しんでいる。
共通点から解き明かす
この相撲絵は坂東巡礼の際、茨城県で購入した。長年倉庫に保管していたが今年の夏、ふと「久しぶりに見てみよう」という気分になり、眺めるうちに「謎解き」に挑戦したくなった。
絵の右端に書かれた文字を「国貞」と解読。以前歴史雑誌の付録で見た歌川国貞の相撲絵と相似していることに着目し、その付録絵の「横綱 緑之助」を調べると、江戸時代後半に実在した力士だと判明。所有する絵の左端にはその力士が所属した相撲部屋名「阿武松」の文字が読みとれた。これらの要素を総合的に解釈し、小笠原さんは「この絵は文政期に活躍した3代歌川国貞の相撲絵」と「謎解き」を完了させた。
絵に「楽しませてくれてありがとう」と礼を言う小笠原さん。今後は千葉県にある阿武松部屋に寄贈ならぬ「返却」することを考えている。「『謎解き』が完了したら、その出自に戻してあげたいじゃない。母心よ」と満面の笑みで話した。
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