神奈川県美術展で工芸の部特選に入賞した 石橋 聖肖(まさのり)さん 浜竹在住 52歳
いぶし銀の魔術師
○…彫金作品「圏界―雲に浮かぶ―」で県美展、工芸の部の特選を受賞した。聖肖の名は書家の父がつけたもの。「聖なるものに似る、って意味なんだよ」とにやり。チャームポイントの豊かな髭はいぶし銀のごとく艶やか。少年のようにも仙人のようにも見える、なんとも不思議な人物だ。
○…茅ヶ崎生まれ。小さいころから暇さえあれば絵を描いたり物作りに熱中していた。茅ケ崎高校時代、”ヤンチャ”をしつつも、美術の授業はきちんと受講。「何かを見抜いた」美術担当教師から、芸術の道を勧められた。「作品をすべて自分の手で仕上げたい」との思いから、東京芸術大学彫金専攻課程へ。現在は制作に勤しむ傍ら、専門学校や予備校などで教鞭をとる。自らアトリエを持たず自宅のこたつや台所で制作し「将来が楽しみな学生に『場所がないから制作できない』なんて言わせない」と、悪戯小僧のように笑う。
○…妻と2人暮らし。「作業をしていて、ふと気付くと隣で縫い物をしていたりする」似た者夫婦だ。作品に魂を込めるため、制作に没頭する期間と充電期間を分けているが、物作りの手は止まらず、趣味と制作の境はあってないようなもの。古いカメラや時計、ルアーなど「人の手が関わって生まれて、時が止まっている物」を見つけては、修繕し、生き返らせるのが楽しみ。愛車の「ジムニー」に乗って湖や山へも繰り出す。「つまらないも面白いも自分次第なんだよ」
○…「作品を1つの形に固まらせないように」と、いつも異なる手法や表現を考えながら制作に臨む。「作品は物語の一部であり、きっかけ。完成させるのは観る人。派手ではなく静かに、でも惹きつける、すーっと入っていけるような作品にしたいね」。受賞作をはじめ、作品は金属を主素材としつつも、どこか生き物の温かみを感じさせる。作品のモチーフに使われている家を覗きこむと、誰かが手を振っているように見えた。
|
<PR>