海側と里山側のそれぞれの地域に根付き、代々暮らしてきた長老へのインタビューを通じて、茅ヶ崎の方言にまつわるエピソードや、その一例を【海ことば編・山ことば編】で紹介してきた。今回は【総集編】として、茅ヶ崎市文化資料館の学芸員で、2012年に論文『茅ヶ崎の方言について』(文化資料館調査研究報告21 )を手掛けた須藤 格さんに話を聞いた。
主に海や漁にまつわる用語が多くみられる通称「海ことば」と、市内北部の農家や旧家に伝わる通称「山ことば」に分類される茅ヶ崎の方言。その背景について「それぞれの生業との関わりが深い」と須藤さんは語る。
「海側の茅ヶ崎や小和田、柳島、中島などは『半農半漁』であるのに対し、山側の多くは『農業』が生活の中心です。『生業』が違えば、1日の時間の使い方から、使う道具、普段から向き合っている文化や信仰、心の持ち様まで違いが出てきます。毎日の生活や向き合っている自然環境の中から、ことばが生まれてきます。1日の時間の流れも1年間の流れも違うため、ことばにも違いが出てきます」
例えば、正月の行事ひとつとっても、漁師は元旦から沖へ出て海で正月の行事をするが、畑作業メインの農家では数日は家の中での祝宴が続く。また食事の内容や時間、回数も大きく異なる。
「また、近隣においても江戸時代に『宿場』があった藤沢や平塚とも違いがあります。宿場町と比べて、起きる出来事や、発達する生業、生まれる文化が違うので、ことばも当然異なると考えています」
音声や文献から地道に拾い上げ
「文化資料館のこれまでの活動の中で特筆すべきは、市民とともに調査を行ってきたことです。記録・保存された聞き取り調査の結果が当館に保存されていたため、茅ヶ崎の方言の論文をまとめる際には、それを活用させていただきました」と振り返る。
須藤さんはかつての調査時の映像や音声テープ、文字資料から一つずつ丁寧に抽出。そのほか、これまで長年同館に蓄積された情報をベースに、自然・動物・身体・生業・健康などの項目ごとに分類し、約7ページにわたる一覧表も仕上げた。「近年は茅ヶ崎の方言や昔話を知る方がどんどん少なくなっています。昔、生業として地引網や農業、養蚕をやっていた方々から聞いた話や、市民ボランティアの方々が、明治から昭和初期に生まれた古老に昔の生活の聞き取り調査をした結果は、とても貴重な資料だといえます」
須藤さんの論文によれば、音韻と文法の相違による全国的な区分では、西関東方言(群馬県・埼玉県西部・東京都・山梨県東部)に属し、さらに県内での区分では、茅ヶ崎は高座・戸塚方言に属するとされている。東京のことばの影響が強く、語尾等に「ベー」がつく特徴のほか、また「アカイ」を「アケー」というように、母音を伸ばす傾向がある。また、「オレ」(オにアクセント)のようにイントネーションにも特徴が見られる。
「茅ヶ崎の方言は、この海や大地で自然と対峙し、時代・地域社会の中で生まれ、影響を受け、変化してきた茅ヶ崎の人々の心意が表象化したもののひとつです。記録・保存することで、人々の記憶を次世代に継承することができれば」
茅ヶ崎版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
21日午後から交通規制4月19日 |
|
<PR>