集中豪雨による大規模な土石流災害が発生した静岡県熱海市に、救急消防援助隊として、茅ヶ崎市消防本部の隊員が派遣された。第1陣として発災直後の現場で行方不明者の捜索を行った3人の隊員に話を聞いた。
総務省から茅ヶ崎市消防本部に対して、出動要請があったのは、災害発生当日(7月3日)の午後6時頃。
事前に情報を得て人選を進めていた同本部では、この日勤務のなかった隊員から、消防司令の小山善嗣さん(44)、消防司令補の中嶋勇人さん(40)、消防副士長の甲斐圭博さん(33)、消防士の木藤幸輝さん(23)の派遣を決定。4人は要請からわずか約1時間後には茅ヶ崎を出発した。
熱海市に到着したのは翌4日の午前1時頃。ともに活動する横浜、藤沢、平塚の消防隊との打ち合わせを終え、車中で仮眠をとった後、朝5時30分から捜索活動が始まった。
女性1人を救助
現場では土石流で倒壊した家屋を一軒一軒回り、行方不明の人を探す作業に従事した。
しかし流れ込んだ泥が周囲を分厚く覆い、足を踏み入れるとすぐに膝上付近まで埋まった。
また災害発生直後ということもあり「二次災害の危険が高まった」と判断されるたびに作業は中断された。
さらに気温が30度近くまで上昇する日もあり、隊員を苦しめた。感染症対策として不織布と医療用のマスクを二重に装着し、ビニール製のカッパや胴長(防水ズボン)も着ていたため「あっという間に汗が長靴に溜まってしまった」(小山さん)という。
倒壊の危険がある家屋に入っていくなど作業は常に危険と隣り合わせ。「正直に言えば怖い」と中嶋さん。そうした時に気持ちを奮い立たせてくれたのが、仲間の存在だった。ともに捜索活動を行った他市の隊員とも励まし合いながら作業を続け「一人でも多くの人を救いたいという気持ちと、仲間の存在を感じることで、恐怖に打ち勝つことができた」と話す。
そして災害発生から約24時間がたった頃、倒壊した家屋から高齢女性1人を救出。小山さんは「生存率が下がると言われる72時間との戦いのなか、助けることができてほっとした」。
6日午前、第2陣と交代した隊員たち。活動中、睡眠は現場近くのテントでとり、食事も持参したおにぎりやカップ麺で済ませながら、過酷な作業を続けた。「現場では疲れを感じなかったが、帰宅してどっと疲れを感じた」と小山さんは振り返る。
「命守る行動を」
4人とも大規模災害の現場は初めて。「思うような活動が出来ず、心残りが多い」と木藤さん。隊長を務めた小山さんは「改めて災害の脅威、命の重みを思い知らされた。豪雨災害は茅ヶ崎でも起こりえるもの。この経験を地域での防災に生かしていきたい。市民の皆さんは、普段からハザードマップによる避難場所の確認など準備をするとともに『いざ』という時はためらわずに命を守る行動をとってほしい」と呼びかけた。
茅ヶ崎市消防本部からは7月12日まで、4隊19人が派遣された。
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