初の長編小説『塔の向こうに』を出版した 榎本 晃一さん 富士見町在住 75歳
「後期高齢者にも無限の可能性」
○…18歳を迎えた主人公・武田友美恵はある日、血液型が両親からは生まれえないものであることを知る。自分は誰の子どもなのか。謎の解明に挑むうち、武田家に隠されたある秘密が明らかに―。このほど、初の長編小説『塔の向こうに』を文芸社から出版した。自ら表紙に描いた「塔」は松下政経塾で、地元・茅ヶ崎の風景も数多く登場する。「『家』『家族』とは何か。古いと思われるかもしれないけれど、私たちの世代が大切にしてきた考えを物語に盛り込んだつもり」と笑顔を見せる。
○…栃木県宇都宮市出身。大学で栄養科学を学び、卒業後は乳酸菌飲料の会社に就職。工場での品質管理のほか、商品開発にも携わった。60歳で退職した後は、市民農園で農業に没頭。40代から始めた陶芸は自宅に窯を持ち、近所のデイサービスで教室も開くほど。知人からの依頼で、7年かけて微生物を活用した農業用肥料の開発にも成功し特許も取得するなど、充実した第二の人生を送っていた。
○…そんな日々をコロナ禍が一変させる。「日課だったジム通いも控え、自宅での時間が増えた」ことで、数年前から構想を温めていた小説を書くことを決めた。武器となったのが、30年以上書き続けている日記。「物語に登場する日のページを読んで当時のことを思い出した。小説のなかにも時代の『空気』のようなものが出せたと思う」
○…「会社員時代、自分が開発した商品が世に出た時もうれしかったけれど、本が出来上がった喜びの方が数倍大きい」という。今後の目標は、80歳までに小説をもう一冊書き上げること。「後期高齢者なんて言われるけれど、いくつになっても色々なことに挑戦できることを証明したい」
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