神奈川県美術展・写真部門で準大賞を受賞した 石田 省三郎さん 白浜町在住 75歳
記録を超えた表現追求
○…『TUKIJI JONAI』と題した作品がこのほど、神奈川県美術展・写真部門で準大賞を受賞した。タイトル通り、閉鎖前の築地場内市場を撮影したものだが、写っているのは使われなくなった大八車やハカリなどで、商品や人物は一切写っていない。「消え去ったものに、人々の面影や痕跡を求めた。伝えたかった部分をきちんと評価してもらえたことがうれしい」
○…その名はむしろ、法曹の世界でこそ知られてきた。「テレビドラマの主人公に憧れて」弁護士を志し、大学4年生で司法試験に合格。1973年に弁護士登録すると、ピース缶爆弾事件やロッキード、リクルートといった疑獄事件などで弁護を担当してきた。「裁判は常に相手があるもの。本当に納得できる仕事はほとんどないけれど、人生を預かる責任の重さは常に感じてきた」と振り返る。
○…そうした日々に変化が訪れたのは2014年。一眼レフカメラを購入したことで「きちんと勉強してみたい」という欲求が湧きあがった。翌年から2年間、京都造形芸術大学の通信教育過程を履修。「実技で都内や京都のキャンパスに通うことも多かった。おかげて週末はほとんどつぶれてしまった」と苦笑するが、技術だけでなく歴史等についてもみっちり学んだ。「何をどう切り取るかに個性が現れ、そこに自らの思想が反映されれば、写真は記録を超えた自己表現になる」
○…今も現役弁護士として忙しい日々を送るが「今後は写真家として生きる」ときっぱり。茅ヶ崎の夜の街角をモノトーンで切り取ったシリーズを撮りためており、近く写真集として出版しようと準備中だ。「ありふれた風景のなかで、どう光を集積するか。まだまだ試行錯誤ですね」
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