出会いの場は、ピンク色の小花が一面に咲き誇る「藍」の畑--。芹沢で藍染め工房『Saiai Studio』を主宰する佐野太紀さん(38)はこの夏、川崎市出身の2つ年上の女性と入籍した。種の採取から藍葉の栽培、染料づくりまで、ひとり手作業で行ってきた佐野さんの歩みは、「最愛の女性との出会い」という思わぬ形で一つの実を結んだ。伴侶となった女性の名前は、藍さん。ふたりで育んだ「藍」にまつわる物語を紹介する。
普段は都内を拠点に、バレエの指導者として活躍する藍さん。昨年10月、スマートフォンに、自動更新で一つの記事が上がってきた。藍の花が見頃を迎えたことを伝えるタウンニュースの記事だった。
自分の名前の『藍』の花を実際に見てみたい-。かねてから、そう思っていた。「でも、徳島あたりまで行かないと見られないと思っていた。こんなに近くで見られるなんて」。記載してあった連絡先にメールし、藤沢北部の畑へ訪れることが決まった。
秋晴れの空の下、藍さんは畑で藍の花を鑑賞したり、佐野さんと雑談をしながら栗の実を拾ったり。バレエ留学の経験もあり、読書家で、アートや文化などに造詣が深い藍さんとのおしゃべりは尽きなかった。互いに「特別な感情は生まれなかった」と言うものの、「楽しくて、時間が過ぎるのがあっという間だった。気付いたら陽が傾いていた」と笑い合う。
ゆっくりと距離縮め
意気投合したふたりは、その後もメールで情報交換を行うように。工房では藍染め体験も行った。「その時、『この間のお礼に』って畑で拾った栗を甘露煮にして持って来てくれたんです」。佐野さんはそう嬉しそうに目を細める。
たまたま都内の博物館で「世界の藍」をテーマにした展覧会もあり、一緒に出向いたことも距離を縮めるきっかけになった。ふたりで過ごす時間が増え、ごく自然な流れで、ともに人生を歩むことを決めた。
藍さんは「出会いのきっかけは不思議だったけれど、結婚という結果自体は全く不思議じゃない」とおっとりと笑う。
出会いのルーツは藍さんの父親
実は「藍」にまつわるエピソートは40年前に遡る。藍さんの名前は、インダス文明を研究する考古学者の父親が「インディゴ(藍)」から名付けたもの。また、「詩人の草野心平さんの『藍』をモチーフにした一編も由来しているそうです」
今年もまもなく開花
今年も、10月下旬から藍の花が見頃を迎える。「種は11月上旬から採取できると思う。花を観賞したい方や、家庭用に種が欲しい方は声を掛けて」と佐野さん。
(問)【メール】hpspjp3@gmail.com、またはフェイスブック「Saiai Studio」からメッセージ
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