「おいしいおかえし」を主催する、寒川町料理飲食業協会の会長を務める 若林 隆さん 寒川駅前「巴屋」勤務 52歳
町の灯 消してたまるか
○…「店を閉めるかもしれない」。緊急事態宣言の時に飲食業の知人から言われた。頭をよぎったのは、夜の寒川町から灯が消えてゆく光景。外出自粛中は自分の店もきつい状況だった。4月から料理飲食業協会の会議を重ね「おいしいおかえし」企画を練り上げた。企画ポスターや冊子の準備などを重ねるうち、今まで知らなかった店主たちの人柄やお互いの店の魅力が分かったという。「みんなアクティブな人たちばかり。意見をまとめてもらい、助けてもらった。この絆を大切にしたい」と話す。
○…そば店に生まれ育ち、朝の仕込みや営業時間の関係で小さいころから朝夕食の時刻が遅かった。寒川中時代は弁当が時々豪華なカツ丼になり、教室で注目の的になった事も。野球部にあこがれて名門・横浜商業高に進学するも、想定外のボート部に入り部長として練習に没頭した。繁華街の川を漕いで下り、海原に出て氷川丸を見上げた。桜の花びらが浮かんだ水面も懐かしい。
○…飲食の道を志し大手ファミレスや仏料理店などを経て、埼玉のそば店で修業。師匠がそばを打つ時はなぜか歌を口ずさんでいた。「きそばの『き』は生きるの意味なんです。人と同じように、優しくしてあげないと」。実家を継いだ今でも師にならい、そば打ちの際はバラード曲を流す。そして念じるのは「おいしくな〜れ」。
○…家業を継ぎ、店にバイトに来ていた奥さんと結婚し、三人の女の子に恵まれた。子育ての終盤に入り、待っていたのがコロナ禍というまさかの急坂。子どもたちの発案でお客さんに丼を持参してもらい、茹でたてを入れるテイクアウト作戦も試した。後押しを背中に感じながら「時々尻も叩かれる」。汗がにじむ顔に笑みが絶えない。
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