伝統の技を伝える若い力
新春を飾る恒例行事として親しまれている消防出初式。江戸時代からの火消しの姿を今に伝える平塚古式消防保存会で今年成人を迎えたばかりの松本知弥さん(市内札場町在住)が今年、花形となる「はしご乗り」の乗り子として”出初式デビュー”を果たした。
1月8日の晴れ舞台。1ヵ月間、毎晩欠かさず行ってきた練習の成果が試された。固定された練習用の梯子とは違い、人が支える不安定な梯子での演舞はぶっつけ本番となった。一番手の演舞となったが、見事重責を果たした。
松本家は戦前から続く鳶職人の家系。初代の曾祖父から数えて知弥さんは4代目で、現在は父親の長哲(ながのり)さんが社長として家業を切り盛りしている。
子どもの頃から父親の仕事場に足を運び、仕事を手伝ったり高いところに登ったりしていたという。高校卒業後、鳶職人としての道を選んだ。
知弥さんが平塚古式消防保存会の門戸を叩いたのは昨年。松本家は梯子の乗り子としても祖父の雅吉(まさよし)さんの代から続いている。「小さい頃から父親が乗っているのを見ていたから、自分も乗り子になるんだろうなと思っていた」と、笑顔を見せる。
乗り子になるのは容易ではない。とにかく危険が伴う演技、教える方もやる方も”万が一”がないよう万全を期さなければならない。まずは低い場所から基礎の演舞を徹底的に仕込まれ、段階を踏んで高さと演技の難易度を上げていく。そこに近道はなく、とにかく毎日乗り続けコツと感覚を体に覚え込ませるしかない。「簡単そうだからと来る人はいるけど、続く人は少ない。簡単そうに見せるのが技で、それが出来て一人前なんだけどね」と長哲さん。
そんな父を「職人としても乗り子としてもいつか超えるべき存在」と語る。父親は「まだまだだよ」といたずらっぽく笑うが、自分と同じ道を歩む跡取りに、その目はどこか嬉しそう。
同会で現役の乗り子は現在わずか3人で、知弥さんは唯一の20代。「演舞のパターンは20以上。自分はまだまだ芸が少ないから、まずは数を覚えたい」と熱意十分だ。伝統の灯を灯し続けようと、若い力が芽を伸ばしている。
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