ホームタウンに「恩返し」 湘南ベルマーレの体育巡回授業
ライフスキルに重点「心に響く授業を」
地域に根差したスポーツクラブ―。Jリーグ百年構想にも謳われているこの理念を体現しようと、湘南ベルマーレが2001年から続けている活動がある。「スポーツの楽しさを知ってもらい、地域に貢献を」という思いから生まれた取り組みを追った。
「今日の授業を担当する、コーチの”てっちゃん”です」。一場哲宏さんの親しみやすい自己紹介から始まったのは、湘南ベルマーレが取り組む「小学校体育巡回授業」だ。児童らは、期待に満ちた表情でコーチの話に耳を傾ける。”てっちゃん”が華麗な足さばきでボールを操ってみせると、「わぁー」と歓声が上がった。
巡回授業は、ベルマーレフットボールアカデミーのコーチが講師となり、児童らにサッカーの楽しさを感じてもらおうと、2001年にスタートした。授業内容は、ボールを使った運動からドリブル、シュートの練習にミニゲームなど。リーグ所属の本格的な指導とあって、児童も目を輝かせながらボールを追いかける。
実施しているのは平塚市だけでなく、茅ヶ崎市や小田原市など、7市3町のホームタウンにある小学校だ。初年度の参加は63校だったが年々増え続け、2010年には延べ1000校、児童数は10万人を超えた。今年度は11月までに160校を数え、平塚市内の小学校は全て回るという。幼稚園や保育園でも指導しており、「児童から『保育園でも教えてもらったよ』と言われることがあるんです」と、一場さんは地域への浸透に手応えを感じている。
2011年度からは指導コンセプトを変更。運動だけでなく、リーダーシップやチームワークなど、子どもたちのライフスキルに重点を置いている。授業中、ぶつかった相手に「ごめんね」と謝った女子児童や、仲間を一生懸命応援していた男子児童を皆の前で紹介し、「謝ることは大事」、「元気な声で応援するのはとてもいいこと」と、拍手を呼びかける場面も。一場コーチは「スポーツでも普段の生活でも、人として大事なのはコミュニケーションや思いやり。一生覚えているような、心に響く授業にしたい」と力を込めて話す。
「ベルマーレ平塚」から「湘南ベルマーレ」に名称を変更したのが、2000年。サポーターや地域住民がチーム存続のための運動を起こし、存続危機を乗り越えた教訓を忘れてはなるまいと、地域クラブの在り方の一つの形として巡回授業を続けてきた。広報の遠藤さちえさんは「あの時支えてくれた地域の皆さんに、恩返しをしたかった」と振り返る。12年目に入った地道な活動が、地域にライトグリーンの魂を根づかせていく。
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