タウンレポート 自殺のサイン 見逃すな 平塚理容組合がゲートキーパー運動
声掛けと傾聴で心の異変を察知
県理容生活衛生同業組合平塚支部(平塚理容組合)は、客との会話から心の異変に気づき、自殺の未然防止に取り組む「ゲートキーパー運動」を始めた。1対1の接客で親密な関係を築きやすい理容師の特性を生かし、兆候のある客に相談機関などを紹介していく。
内閣府が推進するゲートキーパー運動は、自殺の危険を示すサインをいち早く察知し、声掛けや傾聴、見守りといった支援にあたるもの。医師や保健師、民生委員など、生活に寄り添う職務に就く人などの間で養成が広がりつつある。
理容師は、定期的に来店する客と約1時間の調髪中に会話を交わすことで、悩みを聞くことも多い。全国理容連合会は今年6月、内閣府の要請を受けてゲートキーパー運動に賛同、全国の支部単位で講習会を実施し、ゲートキーパーへの理解と知識を深めていくという。
平塚市と大磯・二宮両町の理容店135軒が加盟する平塚支部でも、ゲートキーパー養成講習会を10月に開催。平塚保健福祉事務所の保健師・内山純子さんを講師に招き、啓発DVDなどで会話の仕方や適切な支援方法を学んだ。店頭には、ゲートキーパー宣言サロンを示すステッカーとポスターを貼り、健康や仕事、精神的な悩みなどの相談機関が掲載されたパンフレットを待合室に置くという。
講習に参加した菅谷祐介さんは「何気ない会話から様子の変化を感じられるよう、『どうですか?最近』と声を掛けながら、お客さんが相談しやすい環境をつくりたい」という。
「人の気持ちはひょんなことで変わってしまうもの。精神的な悩みを隠したがる人もいるかもしれないが、放っておくわけにはいかない」と話すのは、平塚支部長の鈴木豊さん。1カ月ほど前、久々に来店した女性客からうつ病にかかったと告げられた。約40年の理容生活で、常連客が命を絶ったと知ったこともあるという。「思い悩んだお客さんの様子に気づいて、少しでも役に立ちたい。理容業界だけでなく、様々な業種にゲートキーパー運動が広がれば」。
市は「平塚市民のこころと命を守る条例」を2008年に制定し、自殺防止対策に取り組む先進自治体として注目を集めた。しかし、市内の自殺者数は年間約50人に上り、未遂者の数はその10倍といわれる。同組合の講習会で講師を務めた内山さんは「支えることがストレスにならないよう、ゲートキーパー自身がリラックスすることも大切。悩みに対してアンテナを張り、適切な相談に応じる仕組みづくりの一助になってほしい」と、ゲートキーパー運動の広がりを期待している。
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