「坊っちゃん亭無鉄砲」の名で落語や大道芸を披露する 富樫(とがし)巖(いわお)さん 高村在住 70歳
軽妙な語り口、連綿と
○…威勢のいい呼び声が、昼過ぎの公民館に響き渡る。「さあさあ、お立ち合い。ご用とお急ぎでない方は……」。テキ屋の口上として有名な「ガマの油売り」などの大道芸をはじめ、落語やマジックを、市内の公民館や町内会の祭りなどで披露している。その語り口は、映画『男はつらいよ』の寅さんさながらの巧みなリズム。「年配の方が笑って楽しんで、健康的な毎日を送ってくれたら」と、声を弾ませる。
○…横浜市出身。神奈川大学を卒業後商社に勤務し、シンガポールやニューヨークに駐在した。妻の病気をきっかけに退職してからは、スナック経営や専門学校講師を経て、転地療養を目的に山口県へ移住。その後、再び根城を変えた福岡県で迎えた還暦の日に感じた思いが、第二の人生のスタートを切らせた。「自分には、これといって何もない」。そう思ったとき、頭に浮かんだのは小さな頃からラジオで聴いていた「落語」だった。福岡市内の図書館近くにアパートを借り、関連書籍を読み漁って、独学で芸を習得した。
○…「寄席のような雰囲気で講演がしたい」と、落語だけではなく大道芸も身に着け、役所や老人ホーム、会社等から依頼を受けると1人で講演を務めた。2011年4月に越してきたここ平塚でも、”寄席行脚”は続く。「日本独特の大衆演芸を伝承していきたい。一緒にやってくれる人がいるといいね」と、芸の保存にも一役買いたいという。
○…芸名は、夏目漱石の小説『坊っちゃん』の主人公と、生き方がシンクロしているという点から。「坊っちゃん同様、無鉄砲な人生なんです」と、笑う。妻と二人で暮らす平塚の生活も3年目。一人娘は市内の柔道場で子どもの指導にあたっており、一家で平塚に根付いている。「これからも地域の人を楽しませたいね」と、芸声とは異なる柔らかな口調でつぶやいた。
|
<PR>
|
|
|
|
|
|
|
<PR>