道端に佇む地蔵は何のために建てられたのか―。道祖神や庚申塔など神仏への信仰のために作られた「石仏」を、平塚市博物館のサークル「石仏を調べる会」(浅野克之会長)が33年間、調査し続けている。市博物館は11月30日(日)まで、市内の石仏3058基の調査記録を紹介する特別展を開催している。
同会の発足は1981年。その2年前に市民調査員を募集して行われた石仏調査をきっかけに、当時同館学芸員で現在は國學院大学教授で民俗学者の小川直之氏を中心に設立した。同会は14年をかけ市内を調査し、地区ごとに記録した『平塚の石仏』16冊を刊行した。
小川氏が大学へ移った後も有志として活動を続けていた会員から、調査に不十分な点があるとの指摘もあり、同館学芸員の浜野達也氏を中心に1997年から再調査を開始。今年になって第2次調査が完了し、現在は改訂版記録冊子の最終刊と総集編の編集作業にあたる。33年にわたり記録した石造物の総数は3058基になった。
会発足当時は会員の手による活版印刷で発行していた冊子も、現在ではパソコンの得意な会員の手によってデータベース化もされている。
とはいえ、調査方法は変わらず会員の「足」で行われる。特に会員を悩ませたのは彫られた文字の解読。年月の流れの中で風化し、擦り減ってしまった文字を記録するために一基に一時間以上を労し、結局読み取れなかった石仏もある。また、記録写真の撮影も一筋縄では行かず、滝の側にある石仏では、足場が悪く、木にしがみ付いて撮影に臨む場面もあったという。
決して楽ではない調査だが、続けるだけの魅力が石仏にはあるという。「彫像としての芸術性もさることながら、石仏から見える日本人の信仰心が魅力です」と話すのは現会長の浅野さん。「人の手で祈りや願いを込めて彫られたものだから、3058基一つ一つ異なるところも面白い」と入会して10年の関根武さんも話す。浅野会長は「会が発足して大きな展示は初めて。会の先輩方にも喜んでもらえれば」と話している。
企画展では、石造物の写真パネル約250点のほか、同館に寄贈された石仏の実物と複製品約20点、石仏信仰にまつわる仏具など約10点がならぶ。展示会場の一部には同会のあゆみを紹介するコーナーも設けられている。午前9時から午後5時まで。詳細は同館【電話】0463・33・5111。
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