第9回伊東市文学碑拓本コンクールで大賞を受賞した 須藤 昌信さん 市内在住 73歳
刻まれた思い写し取る
○…石に刻まれた言葉や思いを紙に写し取る拓本。2年に一度、文学碑を多く有する伊東市で開催される拓本コンクールで、大賞に輝いた。出品作は横幅80cm、縦100cmの大型石碑に挑戦。万葉の小径「いちし」の歌碑に紙を当て、柿本人麻呂の恋歌をくっきり写し取った。これまで数回出品していたが、入賞は初。「瓢箪から駒の気分。指導者や仲間たちに恵まれたから受賞できた。本当にありがたい」と笑顔で話す。
○…定年退職後、余暇を充実させるために趣味を探し始め、拓本や掛け軸などに親しむ「平塚表装同好会」に入会した。きっかけは同会メンバーでもあり、水墨画の指導を仰いでいた林作広さんの展覧会作品。趣のある表装に魅かれた。柿本人麻呂の歌碑は同会の「拓本旅行」で、指導者の古屋忠春さんの勧めで選んだ。石碑に紙を当てると、川の流れる谷底から吹き上げる強風で作業が難航したが、仲間の手を借りながら理想通りに写し終えることが出来た。「自分だけだったら、受賞どころか拓本自体始められなかった」と感謝する。
○…平塚市の農家に生まれ、4歳の時に終戦を迎えた。幼いながら、焼夷弾が炸裂すると夜間でも昼のように周囲が明るくなったことや、防災頭巾を被って防空壕に避難したことを覚えている。3人兄弟の長男で、手に職を付けて家計を助けたいと、現在の平塚工科高校で電気を学び、電気関連の企業に就職。妻との間に息子2人を授かり「無我夢中で働いていたから、家族のことは奥さん任せだった」と苦笑い。今は孫の成長を夫婦で見守る。
○…拓本の楽しさは「同じ石碑であっても、写し方で個性が表れ、自分なりの異なる作品になる奥深さ」。作品にあった表装に自身で仕立てるのも一興だ。「趣味は楽しむのが一番」が信条だが、コンクールといった目標や緊張感があると、楽しみが増すという。「そして良い仲間がいれば更に楽しい」とほほ笑んだ。
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