市内大野地区で生産されているサツマイモ「クリマサリ」が、出荷のピークを迎えている。8月下旬から10月中旬まで収穫され、市内ではJA湘南あさつゆ広場(寺田縄)や、中原支店直売所(中原)などで販売している。
加工品として重宝
「栗より勝る甘さ」から名付けられたクリマサリは、ほくほくとした食感とほんのり上品な甘さ、薄紅色でくねくねとして細長い形が特徴だ。
クリマサリは1960年代から市内での生産が普及した。砂丘地帯であった大野地区は、水はけのよい砂地の土壌で栽培に適しており、1970年には184人の生産者が64ヘクタールを作付けしていたという。収穫されたクリマサリの大半は形が不揃いで、紅色が薄いことから埼玉県の製菓会社に加工用として供給された。市内の市場にはほとんど出回らなかったことから「幻のイモ」という異名を併せ持つ。
現在、市内では1年間に約8〜10tが出荷されれており、約4tが製菓会社に供給され、残りは市内の直売所に卸されている。
市内南原でクリマサリを生産する笹尾廣巳さん(67)は、今年度の収穫について「9月は雨続きの天気で心配だったが、大きいサイズも多く収穫できたので、予想以上の出来だった」と収穫中の畑を見て話す。
県立高校教員を勤めていた笹尾さんは7年前、父の土地を引きついで農業の世界へ飛び込んだ。従事するにあたり、苦労することも多いというが「おいしいと言って食べてもらうのが一番うれしいこと」と笑顔を見せる。
「農薬は極力控えて生産している」と笹尾さん。栽培時、特に神経を使うのが害虫対策だという。イモの表面にキズが付くと価値が低下してしまうこともあり、燕麦(えんばく)と呼ばれる穀物を蒔き、2種類の薬を使用することで害虫の被害を軽減させている。
生産の減少と高齢化
JA湘南によると、地面深く実るクリマサリは収穫作業が大変で、かつ大野地区の宅地化が急激に進行していることもあり、生産規模が年々縮小傾向にあるという。また生産者の高齢化も進行し、後継者不足の問題も浮上している。自身も2代目である笹尾さんも、後継者探しに奔走しており、「10年の間で、後継者を育てられるよう頑張りたい」と話した。
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