タウンニュースは年頭に当たり、平塚市の落合克宏市長に単独インタビューを行った。市長は、海岸エリアの再整備計画や、昨年12月に着工したツインシティ、東京五輪の事前キャンプ誘致などについて語った。(聞き手/本紙平塚編集室 編集長・沼田繁)
――昨年を振り返り、国内外で印象に残った出来事はなんでしょう。
「11月の仏国パリのテロが衝撃的でした。世界全体の治安を考えると厳しい時代です。16年の伊勢志摩サミットや19年のラグビーW杯、20年の東京五輪などを控え、日本の治安、テロ対策が問われます。国内では、9月の台風18号による鬼怒川の氾濫で常総市などが被害を受けました。平塚市も相模川と金目川の河口にあるまちですから、避難体制などを再確認しないといけないと感じました」
――昨年の国会で安全保障関連法案が成立しましたが、政治家として思うところはありますか。
「日本の安全にとって何が重要なのかというポイントが絞りきれない中で、方向付けされた印象があります。私の立場として良し悪しは言えませんが、もう少しじっくりと議論をしていただきたかった」
――市内で印象に残った出来事はなんでしょう。
「3月1日に国道134号の4車線化が完成、その翌週にさがみ縦貫道路が開通しました。半世紀ぶりに平塚を取り巻く道路網の整備が大きく進み、交通利便性が飛躍的に向上しました。北関東や都心からの交通量も増え、いい環境ができた年になりました。ただ、平塚が通過点にならないように、特に海岸エリアの魅力化の取り組みが必要です」
五輪キャンプ「ぜひ誘致」都市整備や学力向上にも意欲
――湘南海岸公園に道の駅をつくる構想は撤回されましたが、海岸エリアの集客施設について、今後どうしようとお考えですか。
「湘南海岸公園やビーチパーク、龍城ケ丘プール跡地、新港、なぎさプロムナードを含め、海岸エリア全体を観光拠点として魅力アップしようという総合的な考え方で進めています。
集客施設については、周辺環境と調和した施設の在り方について検討しています。県が津波浸水想定で最大高を9・6mまで引き上げましたが、一時避難できる施設も視野に入れています。安心安全、地域の魅力発信、トイレ等の便益の観点で、今年は具体的な方向性を示したいと思います」
――ツインシティは昨年、市街化区域編入の都市計画決定、土地区画整理組合の設立認可を受け、ようやく事業スタートしました。
「すでに12月に着工していますが、今年は地盤改良工事や埋蔵文化財の調査が行われる予定です。あと5年もたてば、面整備が目に見えて進んでいくと思います。また、ツインシティを取り巻く周辺道路網も実現化に向けて県へ働きかけているところです」
――どのような道路が計画されているのでしょう。
「寒川町倉見を結ぶツインシティ橋はおおよそ10年後の開通が予定されています。そのため道路では、藤沢市北部からツインシティ橋、大神を抜け伊勢原へつなぐ軸や、市内中心部と国道246号を結ぶ軸、市内西部地域と大神を結ぶ軸の整備を県に求めています。
東海道新幹線の新駅誘致は大きな目標ですが、利便性の高い交通結節点になりますので、企業誘致をアピールして経済活性化につなげたいです。相鉄いずみ野線が湘南台から倉見へ延伸されるのも現実味を帯びてきました」
――ららぽーとが10月に開業しますが、それを中心商店街の活性化につなげる策はあるのでしょうか。
「市外からの消費者を呼び込めるのは確かで、それをどう中心街に巻き込み、平塚全体の活気を高めていくのか。市や商店街、商工会議所らの『中心市街地活性化調整協議会』で、シャトルバスや動線、商店街のあり方を議論しています。 ららぽーとは20〜40代の若い世代がターゲットですが、それなら商店街は高齢者をターゲットにするなど、基本は差別化や個店の魅力化だと考えます。そのためにできることを進めたい」
――見附台周辺地区の整備、特に現在ホール利用を停止している市民センターはどうするのでしょうか。
「民間活力を生かしたPFIの手法で進めようとしましたが、事業者も手を挙げるのが難しかった。市民センターは一先ず耐震改修する方向ですが、新文化センター整備も含め様々な角度から早急に検討していきます。崇善公民館は見附町駐車場に市民活動センターと合築で整備を進めます」
――16年度予算編成の見通しをお聞かせください。
「緩やかな景気回復基調と言われていますが、実感はなく厳しい状況です。法人税の実効税率引き下げと合わせ、地方法人税の実施などの税制改正の影響による法人市民税の減収分は約3億円と見ています。
歳出では、市内高齢化率は現在約25%で、扶助費の増加が進んでいます。10年前と比べると、100億円近く、2倍程度に増加が見込まれます。13年に稼働した環境事業センターの元金償還も始まります。
そうした中、市民サービスのレベルを保つため事業の選択と集中を基本とした予算編成とするつもりです」
――人口減少は歳入にも影響します。人口問題への最重要課題は何でしょう。
「選ばれるまち、住み続けるまちにすることです。平塚には多くの魅力があります。子育て世代や高齢者の施策も充実していますし、それをどう発信していくのかが課題です。
昨年6月にシティープロモーション担当課長のポストを作りました。様々な魅力を市内外に戦略的に発信し、地元への愛着や誇りの醸成、対外イメージの向上、交流人口増、定住人口減少の緩和につなげたいです」
――市総合計画が今年度中に策定され、16年度からスタートします。どう落合カラーを反映させましたか。
「人口減少社会、少子高齢化の中、持続可能なまちにしていくことを重視しました。選挙中も訴えた▽強みを活かしたしごとづくり▽子どもを産み育てやすい環境づくり▽高齢者がいきいきと暮らすまちづくり▽安心・安全に暮らせるまちづくりを、総合計画の重点施策に盛り込んでいます。
地方創生に向けた様々な施策に取り組むことにより、40年に合計特殊出生率を1・8にするのが目標です。国内総人口が減るのにうちの市だけ増やして他が衰退していいのかという議論もある。人口減少を止めると言うのが適切だと思います」
――新年度に取り組みたい新規事業はありますか。
「今年は4月から小児医療費の無料化を中学生まで拡大し、保育所の育休退園も原則廃止します。(仮称)港地区認定こども園の一部供用開始も予定し、民間保育所の改修も含め、3度目の待機児童ゼロ達成を目指します。
また介護保険法の改正により、地域支援事業について、市が事業内容を決める裁量が与えられました。1月からは生きがい事業団が、また、3月からは町内福祉村が訪問型サービスを提供します」
――新教育委員会制度が施行され、首長が市独自の教育大綱を策定するなど、権限が増します。市内の学力向上にどう関わりますか。
「平塚市の魅力を高める手段の一つとして、学力向上があると思います。第1回目の総合教育会議では、教育委員会から『学力の捉え方はさまざまで、テストの点数のみでは図れない』との意見もありましたが、やはり学力の底上げにも取り組んでいかないといけません。今年4月までに大綱を作るので、そこも盛り込もうと考えています」
――20年東京五輪に向けた各国代表の事前キャンプ誘致はどう取り組みますか。
「平塚市は多くのスポーツ施設を有し、一国の事前キャンプを受け入れることができる能力をもっています。
11月には遠藤利明五輪担当相にお会いしてPRしましたし、リトアニア共和国の大使が本市の施設を見学され、素晴らしいという言葉をいただきました。他の国からの視察も受けています。事前キャンプは、市民や子どもたちが世界から集まるアスリートと交流できることも期待できます。ぜひ誘致したいと思います」
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