このほど自著「日本の心 菅原道真」を上梓した 杉山 陽子さん 東真土在住 75歳
衰え知らずの表現者魂
○…詩吟に舞台演劇の要素を持ち込んだ「吟詠ミュージカル」を創始し数十年。これまで脚本家・監督・演者という「三足のわらじ」を履き続けたのは「詩吟になじみのない方にも漢詩や和歌ににじむ先人の心にふれてほしいから」だった。そんな切実な思いの先で生まれた自著「日本の心 菅原道真」では、思い入れの強い「九月十日」を詠んだ道真の波乱に満ちた生涯を詳しく紹介している。
○…大臣として帝に尽くした道真は政略により大宰府へ左遷された後、痛恨の念は胸にしまい、醍醐天皇の厚情に感動の詩を詠んだ。9月10日のことだった。この一題をはじめ道真の詩や歌を随所に盛り込んだ一冊には、ていねいな現代語訳も添えるなど、気軽に読み進められるよう工夫した。「裏切られても最後まで純粋な人間の姿を貫き通した道真。そんな美しき日本人の心を知ってもらえたら」と切に願っている。
○…平塚に7人兄妹の末っ子として生まれた。映写技師の父に毎週のように映画館に連れられた幼少期。「表現者はかっこいい」と思い、平塚江南高校では演劇部に入った。21歳で結婚し、転機は30歳の時。両親が詩吟をたしなんでいたこともあり、息子と一緒に詩吟を習うことに。幼いころ子守唄のように「九月十日」を吟じてくれた母の記憶は鮮明で、いざ習い始めると独特な節使いもすぐに習得した。「詩の世界観を表現する楽しさに夢中になってね」と当時をなつかしむ。
○…才能はすぐに開花し昭和58年には「日本コロムビア全国吟詠コンクール」で優勝。のちに陽風流を創流し、今も宗家として指導する一方、皇宮警察学校で教鞭もとるなど、多方面から求められる伝統芸能の伝承者となった。そんな多忙の折、先月には新たな舞台脚本も完成。詩吟、尺八、芝居で道真の生涯を初めて描く意欲作だ。「何としても上演にこぎつけたい」と前を向く瞳には、衰え知らずの表現者魂が宿る。
|
|
|
<PR>
|
|
|
|
|
|