▼「あなたが避難するビルはどこですか、ビルへの入り方、上り方はわかりますか」。平塚市が2月に東日本大震災の被災者4人を招いた防災講演会で「震災語り部の会ワッタリ」の菊池敏夫会長が会場に訴えた。漠然と考えていた津波災害が一気に具体的になり、はっとした。なじみのない建物に逃げ込む場合もあるだろう。非常階段への入口はどこか、鍵は開いているのか、屋上まで登れるのか、そもそも建物までたどり着けるのか。道路は渋滞する可能性もある。徒歩だったら、津波到達までにどこまで移動できるのか。
▼東日本大震災から7年が経過し、改めて平塚市の津波対策を取材しようと、市災害対策課に話を聞いた。市は2011年から、大津波警報が発令された際、緊急一時避難場所となる「津波避難ビル」の指定を進めてきた。市と自治会が連携し、ビル所有者と三者協定を結ぶことで、「より早くより高く」避難できる場所を確保しようという取り組みだ。現在、海岸に面したJR東海道線以南をはじめ、津波が遡上する恐れのある相模川や花水川沿いの地域にある公共施設を含めた78棟で避難ビルの協定が結ばれている。
▼市によると、災害時に避難ビルを利用してもらえるよう、市広報や回覧板で住民への周知に努めているというが、施設によって防犯セキュリティや管理人の有無、施錠状況は様々。市民一人ひとりが主体的に災害に向き合わなければ、整備してきた津波避難ビルを有効に活用することは難しいという。
▼今週号の本紙で報じた「逃げ地図」は、市民が避難ビルやそこへの到達時間を事前に把握して備えられるだけではなく、住民の当事者意識を醸成するという意味からも有効な取り組みと言えよう。今回の地図づくりには、なでしこ、花水、港地区の自治会が協力し、実際に住んでいるからこそ予見される避難路のハザードなどを官民で確認する機会になったという。
▼市担当課は「地域によって起きる可能性がある災害は異なります。行政だけでは細かい対策まで目が届かない場合がある。自治会を中心に市民主体の災害対策が広まって欲しい」と話す。東日本大震災で行政機能が麻痺してしまったことから、防災を語る上で自助・互助の力は欠かせなくなった。災害に直面した際の自分や家族の逃げ方が明確になっているだろうか。地域の中で助け合う仕組みができているだろうか。命を守ることができるのは、自分自身なのだ。
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