9月10日は世界保健機関が制定した「世界自殺予防デー」。これにちなみ、国は10日〜16日を「自殺予防週間」と定め、全国各地で啓発キャンペーンが実施される。平塚市では10年前、当時としては全国初となる「自殺防止条例」が制定されている。平塚市の今を取材した。
市福祉総務課によると、過去5年間の市内の自殺者数は、2013年から62人、33人、43人、37人、47人と推移する。平均44・4人は、昨年の市内の交通事故死者数と比べると11倍に相当する。男女比は7対3、60代、50代、40代、70代、20代、30代の順に多い。
自殺は個人の問題でなく、社会が取り組むべき課題でありながら、タブー視する風潮が長らく対策を遅らせてきた。
国の自殺対策基本法施行は2006年10月。市内では08年7月、議員提案によって自殺防止条例「平塚市民のこころと命を守る条例」が施行された。条文には自殺防止と遺族支援の充実を明記。施行後は、有識者らによる市自殺対策会議が年に一度開かれている。
さらに、毎年8月下旬から9月には市職員らによる街頭啓発キャンペーンのほか、図書館で命の尊さをテーマにした本の展示なども行われてきた。
周囲への気配りで救える命あるはず
条例提案の発起人だった江口友子市議(42)は、条例を契機に「自死遺族の集い」が始まるなど一定の成果はあったとしながら、自殺志願者を水際で止めるための具体策については課題とし「社会で生きづらい人が、生きられる場所を選べる複数の選択肢が必要」と話す。
自死遺族の集いは2カ月に一度、八幡山の洋館で開かれている。心に傷を負った遺族同士が思いを打ち明ける場で、電話での相談、匿名の参加も受け付けている。進行役を務めるのは、遺族支援を全国で展開するNPO法人グリーフサポートリンク(本部/千代田区)の杉本脩子代表(75)だ。
杉本代表によると、20〜30年経っても心の傷が癒えない参加者も多く、苦しみ続けるのは、「なぜ助けられなかったのか」という自責の念があるから。「周囲に気を配りかすかな声にも耳を傾けることが私たちにできること。それで救われる命はある」と杉本代表は力を込める。
自殺対策に近道はなく、一人ひとりの地道で継続的な働きかけが鍵といえる。
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