平塚市は防災意識の向上を図ろうと19日、防災講演会を市中央公民館で開催した。熊本県の益城だいすきプロジェクト「きままに」代表理事の吉村静代さんのほか、神奈川新聞社「減災新聞」の担当記者が登壇。約250人が来場し、被災現場を知る生の声に耳を傾けた。
吉村さんが活動する熊本県上益城郡益城町は、2016年4月14日以降に発生した熊本地震で震度7の揺れを2回記録している。全壊、半壊した家屋は約6200棟に及び、一部損壊を含めると町内の98%以上が被害を受けた。
吉村さんの自宅も壁が落ちるなどの被害に遭い、近隣住民と駐車場や空き地などでやり過ごしていたが、16日の大雨予報を機に町立益城中央小学校の避難所へ移った。「暗いイメージがあったので行くのは嫌だった」と話す。ペットがいる、小さい子供がいるなどの理由で車中泊を選ぶ人も多かった。
もともと地域づくりのボランティア活動に取り組んでいた吉村さんは、避難所運営に関して行政職員に任せきりにせず、「自分たちのことは自分たちで」と呼びかけた。
車いす利用者の通路確保や清掃、物資配布の協力を募ると、住民同士の会話が自然と生まれた。長引く気配のある知らない人ばかりの避難所生活の中で、顔が見える関係づくりを目指した。
避難所内に作ったコミュニティサロン「きままに」では、「お茶でも飲みましょう」と住民に声をかけ、それぞれの被災体験を語り合う「痛みの共有」を図った。誰でも自由に書くことのできる「きままノート」は、ボランティアスタッフからの激励も寄せられ、すぐにページが埋まった。
コミュニティづくりと並行して行ったのが、避難所生活を普段の暮らしに近づけること。紙皿ではなく食器で食事し皿洗いをしたり、花を飾ったり、「生活を回していくことで特に女性たちは元気になった」と振り返る。
「最後はみんな家族のようだった」と吉村さん。避難所生活は4カ月に及んだ。合言葉は「できる人が、できることを、できたしこ(できる分)」。避難所から通勤する人や、子育て中の人もいたため役割分担はあえてせず、料理好きの人には炊き出しを、元学校教諭には、避難所を明るくしてくれた子供たちへの感謝の表彰状作成をお願いするなど、お互いの得意分野を生かした。
8月、避難所の閉鎖を機に、避難所で培ったコミュニティごと仮設住宅に移った。「お互いよく知った仲。安心してその後の生活が送れ、このつながりが復興にも役立つはず」と話していた。
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