大切な家族を自殺で亡くした人が集まり、悲しみや苦しみを打ち明け合う場として、神奈川県精神保健福祉センターと平塚市が、八幡山の洋館(浅間町)で偶数月に「わかちあい・交流会」を開催している。自死遺族の心のケアをしようと2015年10月から実施され、県内ではほかに、6カ所で行われている。
数人のグループで円になって座り、死別後の様々な思いを語り合う。時には長い沈黙に包まれるが、じっと次の言葉を待つ。匿名やニックネームで参加する人もいる。
当日、ファシリテーターとして進行を担当するNPO法人全国自死遺族総合支援センターの杉本脩子代表は「アドバイスもコメントも評価もしない。悲しみを消す特効薬はないからです。とにかく、そのまま言葉を受け止めることが大切。自分だけではないと思えた時に、少しずつ視野が広がっていく」と繰り返す。「もう半年経つじゃない」「亡くなった人も喜ばない」「成仏しない」「元気になって良かった」「顔色いいじゃない」。励まそうと発した言葉で深く傷つく人も少なくない。
自死遺族であり、今はスタッフとして活動している針馬ナナ子さん、藤井美智子さんは、自らの経験や悲しみを短歌や語りで表現することで、大切な人の死を受け止め、その死に意味を見出そうとしてきた。
針馬さんは3年8カ月前に、麻酔科医として世界的な研究に取り組んでいた娘を亡くした。孤独な研究や多忙、人間関係に苦しみ、泣きながら電話してきた時、「自分の責任は自分で負いなさい」と娘を叱咤した。娘の力を信じ、研究を応援する気持ちがあったからだ。その翌日に、娘は自ら命を絶った。「私が殺したんです。あの時、帰っておいでと言っていれば」と針馬さんは自責の念を抱き続けている。体調不良で外出もままならず、毎日のように電話相談窓口で気持ちを吐き出して生きてきた。
藤井さんは14年前に長男を亡くした。警備会社に勤務し、警備現場での仕事にやりがいを感じていたが、突然の配置転換で営業に異動しノルマや人間関係などから精神的に追い込まれていった。自宅で亡くなっているのを発見したのは藤井さんだ。「時間は薬にならない。人こそが薬。ご縁があった人々によって生かしてもらった」と同センターの活動に力を入れる。
洋館の1室、わかちあいの場だけが「深い喪失感を抱えた人が本当の気持ちを言える唯一の場所」という針馬さん。いかに社会に「安心して逃げ込める場」「受け止める場」が少ないか。その言葉から遺族の孤独を垣間見る。
18年の市内自殺者数は48人。私たちの身近に、助けを求める人はいる。
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