「美術館ってどこ」からのスタート
草薙特別館長は2004年の就任当初を「来場者が少なく、がらんとした寂しい美術館だった」と振り返る。知人が同館を訪ねた際に、地元の中高生に道を尋ねると「美術館なんて知らない」と答えられたという話を聞き危機感が募った。「トイレを借りに入るのでもいいから、市民のみなさんに美術館に来て貰わなければと思った」とまずは美術館の周知に努めた。
転機になったのは08年10月に開催した「近代日本画の巨匠 速水御舟―新たなる魅力―」だ。日本画専門の「山種美術館」に学芸員として勤めた経験から、人脈を生かして粘り強くコレクターとの交渉を続け、国立近代美術館でも借りられなかったような作品の展示に成功した。「100点以上が並ぶすごくいい展覧会になった。この展示を成功させたことが美術館のステイタスとなり『御舟展をやったのなら』と信頼してもらえ、いい作品を借りられるようになった」と草薙特別館長。年間を通じて著名な作家だけでなく、若手アーティストにもスポットライトを当てる大小様々な展示を企画した。
赤ちゃんも大歓迎
企画展と並行して、近年ではワークショップや対話鑑賞など、参加型のプログラムにも力を入れる。草薙特別館長は「全国区の作品を展示し良いものを提供することが役目だと思いやってきましたが、今はそれだけではダメ」と話す。赤ちゃんと保護者が足を運びやすいよう鑑賞会を企画したり、知識がなくても作品について会話をしながら理解を深められる「対話による美術鑑賞」を開催し、受け身になりがちな「鑑賞」の枠を広げた。
市内の小中学生を対象にした対話鑑賞では、なかなか積極的に発言できなかった生徒が、美術品を前にすると意見が言えるようになったという事例も。アートを介したコミュニケーションを学ぶ場所としての可能性にも草薙特別館長は期待する。「展示作品が入り口となって、モチーフとなっている歴史や環境、人の感情といった様々な事柄に興味を持ってもらえる。美術館という場所の素晴らしさであり、今後の大きな役割です」と、これからの美術館のあり方を見据えている。
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