ネット通販や電子書籍の台頭などにより、書店を取り巻く環境は厳しさを増している。経済産業省によると、地域に書店がない「無書店自治体」の数は全国の4分の1に上る。書籍販売を通して、文化の発信拠点としての役割を担ってきた書店の現在地を探った。
駅ビルのラスカ平塚5階にあるサクラ書店。新刊コーナーや小説、雑誌、実用書など一般的な書店の陳列に加え、目を引くのがカレーなどのレトルト食品や雑貨といった、書店には似つかわしくない商品のラインアップだ。
「簡単に情報が手に入る時代で、雑誌は特に売れなくなった」と話すのは、同店の高橋均代表。来店につながる策を巡らす中で生まれたのが、書籍以外の商品を充実させることだった。湘南ベルマーレの試合結果を店員のコメントなどと共に伝える手作りのボードを設置するなど、来店客を飽きさせない工夫も凝らす。
店舗販売には実際に手に取りながら本を選ぶという、ネット通販や電子書籍にはない魅力があると高橋代表は言う。「品揃えは落とさず、店頭での本との出会いを大切にしてほしい」
郊外の読書需要、配達で対応
南金目の越地書店が取り組むのは、店頭販売にとどまらない書籍の配達サービスだ。金目地区は書店のある市街地から離れているため、なじみ客向けのサービスとして70年以上続けているという。越地祐一郎社長は「学術文化、活字文化を守ることは大切。本に直接ふれる場所や機会を提供し続けたい」と、「まちの書店」が担うべき役割を語る。
新たな方法で「本との出会い」を提供する店も出てきた。
明石町の無人堂書店は、読まなくなった本を引き取って新たな購入希望者に販売する無人店舗として、3月に開店。店員を置かずにコストを削減し、24時間営業を続ける。店主は「本屋に来ることで、その人にとって何か新しい発見があれば」と話す。
書店の衰退、国が支援へ
市内では、今年3月に文教堂平塚駅店、TSUTAYA平塚真土店が相次ぎ閉店。市書店協同組合によると、設立当初に9店あった加盟店はわずか3店に減少した。県書店商業組合も、300店以上あった加盟店が10年間で127店と半数以下に落ち込んでいる。
減少に歯止めがかからない書店の支援に向け、経済産業省は3月に「書店振興プロジェクトチーム」の設置を発表。書店を地域文化の振興拠点と位置付け、個性ある取り組みを後押しするための方策を検討するとしている。
専門チームでは今後、書店への聞き取りやキャッシュレス決済などデジタル化を推進するほか、優れた取り組み事例を周知するなど、書店の存続に力を注いでいくという。
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