台風10号に伴う記録的な豪雨に見舞われた8月30日、二宮町では葛川溢水による浸水や土砂崩れが発生し、最も危険性の高い警戒レベル5の「緊急安全確保」が初めて発令された。
発災から1カ月以上が経過した今も、浸水被害にあったマツモト斎場(二宮町二宮)の工藤みち子さん(70)は「警戒を呼び掛けるエリアメールなど町民への周知を徹底すればもっと被害を小さくできたのではないか。やるせない思いがある」と苦しい胸のうちを抱えている。
「30年前にも大雨の被害があったけど、ここまでひどいのは初めて」と話すのはみち子さんの姉の石渡まち子さん(75)。道路より低い位置に線香売り場などがあったため、日頃から大雨前は備品を椅子に上げたり、扉にパッキンをつけて雨を防ぐよう工夫していた。
しかし、今回の溢水では最大120cmまで浸水。売り場のショーケースはひっくり返り、線香のほか、倉庫の備品も水浸しに。水が引いても土砂や雑草は残り、みち子さんは「片付けても片付けても終わらない。心が折れた」と振り返る。
葛川整備については神奈川県の「葛川水系河川整備計画」に基づき進行中だが、町民としては整備の完了を焦る切実な思いがある。みち子さんは「大雨は次いつ起こるかわからない。河川整備は行政の大切な仕事。町や県は今回どんな被害があったかをしっかり把握し、何か手立てを考えて欲しい」と訴えた。
被災の恐れは昔から
大應寺(二宮町二宮)では周辺道路が浸水し通行不可に。裏山は急斜面となっているが、15年ほど前から先代住職が土留めや水路の確保を行っており、大きな被害はなかった。水島利正住職は、「昔から被害の可能性があるのはわかっていたのだと思う。防災について、町はもっと考えてほしい」と話していた。
二宮町の防災担当者は「情報発信の仕方や内容など、今回を教訓に改善していきたい」と話し、防災無線と同様の内容を登録者に配信する防災メールや10月1日に開設された公式LINEの活用を呼びかけていた。
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