旧吉田邸 町民の意思を諮る再建の具体像示せ デスク・レポート
▽半分もあると見るか、まだ半分しかないと見るか。「コップ半分の水」の例え話ではなく、大磯町の旧吉田茂邸再建のことだ。平成25年3月までに5億円を集めることを目標とする再建基金には10月末日現在で約2億5047万円の浄財が集まった。当面は3月11日に起きた東日本大震災の復興支援を優先していることもあり、春以降の再建寄付金のペースダウンは仕方ないこと。そんな中、今年6月に(財)吉田茂国際基金から2億円の寄贈を受け、目標金額の半分に到達した。再建へ向けて大きな弾みがついたのは心強い。しかし、同財団からの寄付がなければどうだったか。
▽昨年9月の町議会定例会で募金状況について、この時点で目標の1割に相当する約5千万円が寄せられ、町内で寄付に応じたのは全世帯の3%だったと報告があった。平成21年3月に旧吉田邸が火災で焼失し、7月に再建を目指して基金がスタート。町のイベントや高速道路のサービスエリアなど町内外で募金活動が展開された。町内24地区で住民説明会を開催。海外へ支援を求める英語版のパンフレットも作成され、町外や県外からも多くの寄付が届いた。それなのに、全世帯数の3%とは少な過ぎないか。そもそも大磯町民に再建を望む気持ちがどの程度あるのか、疑問に思えてくる。
▽話は二宮町へ。駅南口にある「ガラスのうさぎ像」は平和と友情のシンボルとして昭和56年に町民の浄財で建てられたものだ。建立費の約1300万円は町内の約9割にあたる世帯からの募金で賄った。悲惨な戦争を二度と繰り返してはならないという町民の真摯な思いが、像を建てた。
▽うさぎ像と旧吉田邸では金額のケタも大きく違う。雇用不安を抱え収入が伸び悩む現在とは経済状況も異なるが、旧吉田邸再建に欠かせないのは大磯町民の熱意や本気度ではないだろうか。そのためには、まず町が再建構想の具体像を町民により強く訴え、再建後の利活用方法や町が維持管理を担うことも見通した将来計画を積極的に示していくことが必要だ。「再建費用の一部は町でも負担するが、国から補助金をもらって、後のことは県にお任せ」という姿勢になってはいけない。そうでなければ町民もついて来ないだろう。
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