世界遺産や蘇峰堂の梅園などを手がける樹木医 安部 鉄雄さん 54歳
”木が大好き”が仕事に
○…鹿児島県屋久島や福井県永平寺の杉、地域の街路樹―。名木・古木の保存に全国を駆け回る樹木医がいる。樹木への”治療”は、木が植えられている土の改良と、本来根(ね)が育つ箇所でない幹(みき)から出た根が水を吸えるよう、地中に戻す「不定根誘導」があるという。「水や有機物が循環するようにしてやるんですよ」と親しみやすく話してくれる。
○…今年春からは、梅の名所として知られる徳富蘇峰記念館(二宮町)で庭園整備に携わる。樹木医仲間と町民ボランティアらとともに、下草刈りや古木の枯れ枝除去、水路づくりなどを行った。ぼたんや菖蒲などの花が1年中咲き誇る花木園へ再生させようという取り組みだ。「日本は生活の中に木があるのが当たり前。だからこそ意識して大切にしていきたいですね」と笑顔で語る。
○…若い頃は登山が生活の中心だった。小学校高学年の時、登山家になると決め、大学では山岳部を立ち上げた。卒業後一般企業に就職するも、登山を続けるために友人に誘われ植木屋になった。「10カ月間働いては、2カ月間登山のため海外に出るという生活でした」。ヒマラヤなど世界の山々に挑み、42歳の時体力の限界を感じた。丁度その頃、植木屋の経験が7年を超え、樹木医の受験資格を持つ年数に達していた。さらに突きつめて木のことを学びたいと試験を受けて樹木医になり、現在に至る。
○…「古木の治療はどの位かかるのか」との質問に、「100年位かな」と冗談っぽく答える。樹齢数百年の木が長い年月をかけて衰えるように、回復するのも時間がかかる。知識と技術を次世代へ引き継ぎながらの多忙な日々だが、苦にはならないという。「とにかく木を見るのが大好き。仕事が趣味なんですよ」と笑いながら話す姿は、木の保全だけでなく、自分に正直に生きていく大切さも教えてくれた。特定非営利活動法人自然への奉仕者・樹木医協力会理事長。横浜市在住。
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3月29日