ガールズ競輪1期生として活躍した島野麗敏(りーみん)さん(35)=大磯町東町=が、プロボクサーとしての道を歩み始めた。29日には後楽園ホールでプロデビューを果たす。「絶対に勝つ。ただそれだけ」。かつてバンクを席巻した華々しいキャリアを捨て、主戦場をリングに移して格闘技の世界に挑む。
大阪府出身の島野さんは高校卒業後、ビジネスマネジメントを学ぶため米国サンディエゴ州立大学に留学。滞在中に始めたボクササイズをきっかけにボクシング大会に出場すると、初戦をTKOで飾った。
「最高に気持ち良いじゃん」。拳を武器に、1対1で戦う単純明快なルール。パワーやスピード、駆け引きの先にある勝利の喜び――。このままボクサーとしての人生を歩もうかと心が揺らいだ矢先、体に不調をきたしてドクターストップがかかった。夢を見失い、帰国後は自宅に引きこもりがちになった。
27歳のとき、友人の誘いで運転したロードバイクの疾走感にはまった。折しも48年ぶりにガールズケイリンが復活するタイミングと重なり、日本競輪学校に女子1期生として入学。2012年に平塚競輪場で開催されたオープニングレースで優勝を果たし、同年の第1回ガールズグランプリにも出場した。
ライバルを尻目にトップでゴールラインを駆け抜けるたび、「天職だ」と感じた。しかし、リング上で繰り広げる戦いを忘れることができなかったという。
平塚市のボクシングジムに通うようになると、競輪のトレーニングがおろそかになって成績に影を落とし始めた。「(競輪の)師匠に相談すると、『中途半端はだめだ。競輪かボクシング、どちらかを選べ』と言われて」。師匠から浴びせられた一言で、数々の栄光を築いた競輪選手としての引退を決断した。
今年3月にボクシングのプロテストに合格。スーパーフェザー級に出場するデビュー戦に向け、ジムでのトレーニングだけでなく、毎朝4時に起床して自宅から海岸や湘南平までのランニングもこなす。「昔は考えたこともなかった」と減量には手を焼くが、体重は競輪選手時代から20キログラム近く落ちた。
ストイックな生活を支えるのは、15年に結婚した競輪関係の団体職員で9歳上の夫の存在だ。「私が決めたことに、いつも理解を示して応援してくれる」といい、競技転向の際も背中を押してくれたと感謝する。
レース次第で多額の賞金が見込める競輪選手としての収入を失ったが、悔いはない。「周りからは『なんで辞めたの』と聞かれるけれど、ボクシングが好きだからとしか言いようがないです」。日本を制し、アジア、そして世界チャンピオンをも視野に入れる遅咲きのルーキーは、「3年で結果を出す」と夢へのロードマップを描いている。
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