カフェの街・オーストラリアのメルボルンで、コーヒー焙煎士として第一線で活躍する日本人がいる。二宮町出身の石渡俊行さん(40)。豆の産地や品質、抽出などにこだわったスペシャリティ・コーヒーの人気が日本でも高まるなか、人を幸せにするおいしいコーヒーを追求している。
石渡さんは父親の海外赴任にともない、2歳から6年半、ブラジルで育った。米国ロサンゼルスにも暮らし、二宮中学校卒業後は農業高校へ進学。園芸関係の仕事に就いたが、海外に出たいという思いは強く、地中海に浮かぶマルタ島を訪ねた。「現地で外国人の友人もでき、もっといろいろな所に行ってみたくなった」
親類が営む葬祭業などで働き、100万円を貯めると、ワーキング・ホリデー制度を利用してニュージーランドへ。語学学校に通いながらレストランでアルバイトしていたときのこと。職場の仲間が入れてくれた1杯のコーヒーで、そのおいしさに引き込まれた。
コーヒーを客に提供するバリスタの職を求め、28歳の時に渡豪。多数のカフェが賑わうメルボルンで150軒の店に履歴書を送り続けるも、仕事先は見つからなかった。石渡さんの熱意を見込んだバリスタ・スクールの教員のつてで、カフェに雇われた。腕を磨き、豪州国内のテイスティング大会で優勝するなどコンテストでの入賞も重ねた。
2010年から「マーケット・レーン・コーヒー」に勤める。焙煎では、温度と時間を細かくモニターし、「豆がはぜる音や香りの変化などを捉えるために五感をフルに使います」。仕入れた豆の状態からドリップした液体が客の口に入るまでの品質管理も担い、産地ブラジルの農園に足を運ぶ。
石渡さんにとってコーヒーは「1杯で朝から幸せな気分になれて、記憶をよみがえらせてくれる飲み物」。ある時は「父が弟と私を連れて行ってくれたブラジルの牧場の風景や、サトウキビをかじった時の味覚が鮮やかに浮かんだ」という。
今月半ば、石渡さんは妻子とともに一時帰国した。19日には二宮町内の貸しホール縁(えにし)館でトークショーを行い、メルボルンのカフェ文化やコーヒーの奥深さなどについて語った。石渡さんが焙煎したコーヒーの試飲もあり、参加者の女性は「今まで飲んだコーヒーと全然違う。甘い香りがして癒される味」と満足そうな笑顔を見せた。
約1カ月の日本滞在中、コーヒーイベントのゲストや大会審査員などとして引っ張りだこの石渡さん。「国内でも若い焙煎士やバリスタが活躍しているのはうれしい」と話す。
「30歳までに自分の仕事を見つけなさい」。20代で海外に送り出してくれた母親の言葉を振り返る不惑は「焙煎士の仕事を続けていく」とゆるぎない。
大磯・二宮・中井版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|