「それではお話を始めさせていただきます」―。期待に満ちた表情の客席にニッコリと笑いかけて語り始める。今回のテーマは近代の実業家・浅野総一郎。旧浅野財閥の創始者が大磯にゆかりがあることを知る人は少ない。語りは軽妙で、時に快活、時にひそひそと抑揚を使い分けて聞き手の想像力をかきたてる。偉人の意外な一面を茶目っ気たっぷりに披露すると会場が笑い声であふれた。
大磯町在住の武井久江さん(69)は、大磯で9年ほどまち歩きガイドを務めた経験と、自ら日本各地を巡り聞き集めた偉人の逸話をまとめ「語り部」として伝える活動を昨春から続けている。鴫立庵で月2回「大磯ゆかりの8人宰相」、大磯駅前の湘南ギャラリーえんで月1回「偉人を支えた妻たち」などをテーマに語り、まもなく30回になる。「天職かなと感じています。お客さんの顔を見ながら反応を肌で感じられるのはとても楽しい」と嬉しそうに微笑む。
偉人から知る大磯の魅力
「1人でも多くの方に、大磯という素晴らしい町とそこに暮らした立派な人たちのことを伝えて、地域を盛り上げたい」。そんな思いで始めた語り部の活動。話を聞きに来てくれる人たちを楽しませようと、紹介する人物の出身地や墓所、関連の建物への訪問は欠かさない。「現地で生の声を聞いて、資料と突き合わせてからお話しするようにしています」と「知られざるエピソード」の収集に苦労を惜しまない。常連の80代女性は「とてもよく調べていて、その人の歩みから人柄まで詳しく知ることができる。本よりわかりやすくて、いきいきと語ってくれるので毎回楽しみにしています」と魅力を語る。
今後について武井さんは「語り部に加えて、大磯のスポットを案内するミニツアーなども開いていきたい」と次の「おもてなし」を企画している。
武井さんの開く「語り部の会・あこ」は、鴫立庵が第2・4月曜日の午前10時から11時まで。入庵料込500円。湘南ギャラリーえんが2月15日(金)午前10時30分から正午まで、テーマは安田善次郎。1000円。いずれも予約優先。申し込みは鴫立庵【電話】0463・61・6926、えんは武井さん【電話】0463・71・9596へ。(留守電に名前と連絡先を伝える)
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