大磯町横溝千鶴子記念障害福祉センターの2階部分を使用している社会福祉法人おおいそ福祉会に対し、町が明け渡しと賃料相当損害金の支払いを求めた訴訟で、横浜地裁小田原支部は6月21日に町の請求を棄却する判決を下した。
同センターは、篤志家の故・横溝千鶴子さんが1999年に大磯町へ寄付した5億円を原資に2003年に建設。横溝さんは寄付の数年前に同法人の前身の地域作業所を訪れており、施設整備などによる障害者福祉の充実を願っての寄付だった。
センター2階部分については、開設当初から同法人が障害福祉サービス事業所「かたつむりの家」を運営。障害者が部品の組み立てや雑貨製作などを行い、町も利用を認めていた。両者は10年に施設利用に関する覚書を交わしたが施設使用料や使用期限については触れておらず、町の申し入れで11年から両者で話し合いを重ねたが妥協点が見いだせなかった。町側は「他の障害福祉団体からセンターの平等な使用を望む声があがっており、現在の占有状態を解消したい」と明け渡しを求めたが法人側も譲らず、町は16年12月の町議会で提訴議案を可決して訴えを起こした。今年1月、同法人が23年6月末までに退去し、それまで月10万円の使用料を支払う和解案を裁判所が提示したが町側が応じなかった。
判決では建物の所有権は町側にあり、覚書をもって使用賃借契約が結ばれたものと見つつも「条例や議会の議決に基づかずに行政財産を無償貸与する契約は私法上無効」と判断。同法人に2階部分の占有権限は無いと町側の主張を認めたものの「同法人の障害福祉事業や利用者への十分な配慮がされないまま、現時点において明け渡しや損害金の支払いを求めるのは権利の乱用にあたる」と町の請求を棄却した。
判決に対し中崎久雄町長は「町側の主張は認められたが、現時点では法人に対し福祉的な配慮を求める判決。町内の障害福祉関係者が建物を平等に使用できる拠点となるよう、今後の対応を検討していく」とコメント。かたつむりの家の末村光介施設長は「司法の良識ある判断に感謝。今回の件で一番影響を受ける利用者やその家族に、心配ないと伝えることができる。判決文にある『現時点』という言葉の意味を十分に理解し、今後の移転先の確保などを検討していきたい」と話した。
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