75年前に戦地で帰らぬ人となった兄に代わり、平和と故郷への思いをつづった著書『ビルマからの手紙』を二宮町在住の原律子さん(75)が自費出版した。「日本の原風景を忘れることなく、平和な時代に生きるありがたみを感じて」と伝えている。
原さんの兄・山縣朋一さんは大正11(1922)年、10人きょうだいの長男として山口県阿武郡六島村(現在の萩市大島)に生まれた。昭和18(1943)年4月5日に出征。翌年10月、ビルマで他界した。22歳の旧陸軍軍曹だった。
兄の出征後に末っ子として誕生した原さんは、結婚を機に二宮町へ移り住んだ。義父と義理の叔父を戦争で亡くした嫁ぎ先では、実家の亡兄のことを気にしながら、原家の供養を優先させてきたという。「遺族として真実を知りたい」。原さんは子育てを終えてから戦争に関する調査を始めた。
桜が咲き誇る2年前の4月の雨の日。遺骨収集に参加するために兄の軍歴の開示請求をしていた厚生労働省から通知が届き、出征日を知った原さん。「二宮の桜と同じように萩大島の桜が満開のもと、兄は出征したのだろうか。跡取りとして生きて帰ってきたかったはず」との思いから、『ビルマからの手紙』を執筆。兄が肉親に宛てた便りという体裁で、山縣家のルーツや家族、故郷の風景、昭和の戦争と平和への願いなどについてまとめた。
「手紙」には「戦争は国も家族も人の心も壊してしまう」「我々の死は何だったのか。時が経ってまた戦い合うことがない様に戦争の怖さを、過去を忘れないで下さい」と、物質的に豊かになっても混迷化する世界へのメッセージが記されている。「兄の慰霊を実現でき、故人もようやく茶色い軍服を脱ぐことができたのでは」と原さんは話す。本は二宮町と大磯町、近隣の平塚市などの図書館、中井町の図書室に寄贈されていて閲覧できる。
二宮町遺族会に所属する原さんは、戦争体験者の証言や戦争の悲惨さを紙芝居で伝える活動を続けている。今年は8月17日(土)にラディアン・ミーティングルーム1で上演する。演目は「忘れられないあの日」「荷物と同じ重さの人生を生き抜いて」。午後1時30分から2時30分まで。参加費無料。対象は小学生から。
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