中井町立井ノ口小学校の瀬谷学教諭と今年3月に卒業した教え子たちが「劇団蒼天の花」を設立した。広島市にある「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さんの実話を軸に脚本化した作品『二十一世紀サダコストーリー』を8月に発表する。4月から活動を開始し、せりふの練習や動画撮影に励んでいる。
団員10人は、瀬谷教諭が担任を務めた元6年1組の有志。中井中学校1年生だ。昨年、授業の発展学習としてクラス全員30人で学級演劇に取り組み、同作品をDVDに制作した。「真剣に劇をして達成感があり、またやりたいと思った」「中学生になっても6年1組の仲間と活動できることがうれしい」。劇団結成に加わった動機をメンバーらはそう話す。8月の旗揚げ公演は再演になるが、新しい配役で臨む。
『二十一世紀サダコスーリー』の脚本は同教諭と卒業生が手がけた。作中に登場する「サダコ」とは、広島に投下された原爆によって2歳で被爆した佐々木禎子さんのこと。小学6年生のときに白血病と診断され、回復を祈りながら折り鶴を作り続けたが、12歳で他界した。禎子さんの死をきっかけに原爆で亡くなった子どもたちの霊を慰め、世界平和を築こうと、「原爆の子の像」の建立運動が全国に広がり、1958年に像が完成した。
小学3年生の国語教科書に掲載されている戦時中の物語『ちいちゃんのかげおくり』と、広島平和記念資料館が発行する紙芝居も脚本のベースにした。「世界から戦争をなくすためにどうすればいいのだろうか」「核兵器を作ろうとするのも、使おうとするのも人間だ」。子どもたちが授業だけでなく自主学習で原爆や戦争について調べ、考えたこともせりふに盛り込まれている。
演劇で成長めざす
6月19日の土曜日、井ノ口公民館に団員7人と瀬谷教諭が集まった。中間テストと運動会があったので、活動は1カ月ぶり。舞台での立ち位置を確認しながら、マスクを着けてせりふを発した。
新型コロナウイルス感染症対策を考慮し、12場面中10場面は動画を撮って農村環境改善センターで上映し、最後の2場面を舞台で上演する。劇団員は「禎子さんのことや戦争の悲しさを知って、平和のために私たちができること、戦争を起こさない心について考えてもらいたい」と話す。
「演劇を通して歴史的事実や先人の知恵、自分たちの思いを伝えていく」と瀬谷教諭。学び合いや成長、信頼関係の構築などを劇団の目標に掲げる。第2作『稲村の火』、第3作『井ノ口110年の歴史(仮題)』の公演も計画している。
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