近年、全国的に被害が増加している「ナラ枯れ」の根本的な原因を学び、持続可能な森の育て方について考える講習会が、7月10日に大磯町で開かれた。日本各地で環境調査や改善指導に取り組むNPO法人地球守の高田宏臣代表理事を講師に招き、講演と現場実習を実施。町内外から多くの参加者があった。
ナラ枯れは、樹木に穴を開けて潜入するカシノナガキクイムシが持ち込んだ病原菌により、木が水を吸い上げる機能が阻害されて発生するもの。これに対し高田さんは「被害の拡大は虫だけの問題ではなく、その土地の土中環境が悪化していることが影響している」と指摘する。戦後、大規模に山を削ったり、コンクリートで斜面を抑え込むような開発が進んだことで土の中の水や空気の流れが阻害され、樹木が健全に育たなくなった影響とし「人が弱っていると病気にかかりやすいのと同じ。病気になったから薬を飲むのではなく、体(=土地の環境全体)を見て根本的な対処をすることが必要。それには自然界からのサインを見逃さないことが大切」と受講者に語りかけた。
不健全な森林環境では、高木が倒れた後に後継となる木が育たず、低木やツルなどの藪に代わる。日差しや空気の流れも悪くなり、土壌は雨が降っても水が染み込まず乾燥して、斜面崩落などの原因にもなると解説。「山の環境の変化は影響が出るまで10年以上のタイムラグがある。7年前の広島県や先日の熱海の土砂災害現場でも、上流では以前から高木枯れなどの兆候があった。災害の責任者探しで終わらず、未来のため、今後の開発のあり方や健全な自然環境を取り戻すことなどに意識を向くようになれば」と思いを語った。
また毎年松枯れが発生していた新潟県の森が、土中の水と空気の滞りを改善する作業をしたことで翌年から被害が発生しなくなった事例などを紹介して「健全な状態でない森林も人間が適切に手を入れれば、数年で再生できる。千年の安定を作ってきた先人の知恵を現代に生かすことも必要」と説き、「植生が豊かな大磯丘陵は地域の宝。自分たちの世代で食いつぶすのではなく、次世代に遺すために守ってほしい」と呼びかけた。
作業の実演も
講演後に行われた現場実習では、大磯運動公園を造成する際に谷を埋め、昨年ナラ枯れが発生した場所で土中環境改善作業を実演。土地の読み方や、適切な場所に穴を掘り落ち葉や枝などを差し込むことで土に水を染み込ませやすくする方法などについて解説。受講者は熱心にメモを取ったり、動画を撮影していた。川崎市から参加した女性は「自宅近くの里山が藪化していて、高田先生の講義を聞きたいと参加した。今後に役立てていきたい」と話した。
ナラ枯れについては県も今年度約3700万円の予算をかけ、衛星画像を解析して広域的な被害状況の把握に取り組む。
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