平成24年新春放談 「課題を突き破り、上昇していく小田原に」 加藤憲一小田原市長 新春インタビュー
2012年の幕開けにあたり、本紙では加藤憲一市長にインタビューを行った。昨年を振り返ると共に5月の市長選や今年の抱負などについて語ってもらった(聞き手/小田原編集室編集長・梅原達也)。
――あけましておめでとうございます。まず平成23年を振り返って感想をお聞かせください。
「平成23年は何といっても東日本大震災という災害の発生により、色々な意味で大きな課題を突きつけられた一年でした。災害対策の強化は当然として、私たちがこれからどういう小田原を創っていくのか、日本の地方都市をどのように創っていくのか、ということを根本から問われた年だったと思います。
また、私が市長に就任以来進めてきたまちづくりの方針や、市民の皆さんと一緒に手がけてきたことが正しかったかどうかが問われ、結果的に間違っていなかった、むしろより強く取り組んでいくべきなのだ、ということが確認できた年だったとも思います。
もう一つ、不祥事が複数発生しました。職員が市民の皆さんとの信頼を築き、頑張って作業している中だけに、本当に悔しい思いをしました。ただそれを受け止め、打ちひしがれるだけではなく、これを機に組織の健全化や活性化を図り、市民の皆さんとの、より強い信頼関係を築かなくてはならない、と発奮した年でもありました。
災害や不祥事をマイナスの要素として捉えるのではなく、より力強く次のステップに向かっていかなくてはならないということを肝に銘じています。そういう意味では試練の年という言い方も出来ますし、次なるステージへの大きな転機だったという言い方も出来ると思います。
市長の評価というのはこれまで、目に見える成果、例えば何かの料金が下がる、建物など形を作ることで評価されることが多かったと思います。しか し、それがなかなか出来ない状況の中、私はむしろ様々な課題に立ち向かっていく小田原市全体―職員、市民を含めて―の問題解決力を高めていくこと、質的な 部分のレベルアップを目指すことの方が、未来に向けて誠実に生きていくことなのではないかと思っています。それは首長にとって難易度の高い仕事ですが、私 の中では着実に前に進んでおり、私の思い以上に市民の皆さんや職員は応えてくれています。目に見える成果として、全市民が実感できるレベルには至っていな いという事業もありますが、粘り強く、批判も甘受しながら、前に進む必要があると思っています」
――東日本大震災の影響はありましたか。
「小田原は昔から大地震がくると言われていたので、揺れへの備えはあったと思います。しかし、今後の対策として、「いのちを守る小田原」を実現するために、日々の暮らしやまちづくりをどうしていくかについて深く考える必要があります。
市政として「持続可能」を一つのキーワードに、「市民の力で未来を拓く希望のまち」を目指していますが、震災で改めてその必要性が実感されたと思います。 持続可能な暮らし―エネルギーや食料の自給、水の確保、農地や森の保全、地域の結束力、隣人との絆など―がいかに大切か、被災地が復興を目指す様子を見 て、誰もが切実に感じたと思います。今回の東日本大震災は、私たちの暮らしを根本的に見直す大きな転機になりましたし、目先の防災対策だけでなく、自分た ちの暮らしや地域を考え直すきっかけとなりました。
震災後、市民の皆さんに動いていただいているのは津波避難対策です。職員も少ない人 数で頑張っていますが、地域の方々も海抜の低い地域に住んでいる皆さんの命を守るために、津波避難ビルの指定や避難ルートの選定など、昨年の真夏の酷暑の 中、一緒に歩いてくれました。これはすばらしいことです。またその中で、「絆が強まった」、「地域のことをより知るきっかけになった」という声を聞き、私 たちがこれまでやってきたコミュニティを確かなものにしようとする取り組みが、「防災」をきっかけに二歩も三歩も大きく前進したという実感があります」
――市民ホール、地下街、お城通り地区再開発のいわゆる三大事業について、進捗状況はいかがですか。
「よく成果として問われるのが三大事業だと思います。ハードが出来ていない現状に対し、「全く進んでいない」と言われますが、決してそうではありません。
市民ホールについては、建物の建て方や土地の使い方など、いわゆるハード面の議論や、ホールで何を実現していくのかなど、ソフト面まで一から積み直してき ました。基本構想ができ、この春には基本計画が出来上がってきます。大事なことは、建物が出来た時にどのように生かしていくかという中身の議論であり、芸 術文化の創造は中身の議論が本質だと思っています。この作業も専門家や市民の方々に何度となくワークショップや議論を重ねていただき、相当出来上がってき ました。文化振興ビジョンという市の文化政策の根幹にまつわる議論もだいぶ進んできています。建物の建設には至っていませんが、そこに必要なパーツ(ソフ ト)は、相当議論が深まっています。
お城通り地区再開発は、現在の経済状況では、民間事業者のみに任せる再開発事業の推進は厳しいと見極め、小田原市が責任を持って公共事業を実施し、まずお城通りに緑化歩道を整備する事業を進めています。
昨年、一部の民間建物の除却調整がまとまるなど、その作業が進んでいます。お城側に配置する駐車場施設と公共・公益施設などが入る建物についても、平成 26年度中に稼動できるよう作業に取り組んでいます。こちらも着々と話が進んでおり、様々な権利関係の整理が図られているところです。
地下街は、JR東日本グループと一緒に作業し、再生計画が2月中にまとまってきます。これは小田原駅・小田原城周辺まちづくり検討委員会の方針を踏まえた 具体化の作業で、いくつかのプロセスを経てようやくここまでたどりつきました。ここから先は議会や市民の皆さんに議論していただいたうえで改修工事の実施 設計を行い、平成25年度のしかるべき時期に再開できるようなプロセスとなっています。
どの事業もいくつもの行程と手続きを踏んできています。これから相当前に進むところまできていますので、お待ちいただきたいと思います。「市長が決断しないから進んでいない」といったご指摘はあたらないと思います」
――昨年は新しい総合計画が示されました。
「これは昨年度からというよりはこの任期の中でやってきたことの総括的な話になってしまいますけれども、総合計画が昨年の春にスタートし、またこの1月1 日からはこれも皆さんに議論していただいた自治基本条例を施行しました。新しい小田原をスタートさせる枠組みがここでようやく整いました。
様々な分野の課題解決を図るための市民の皆さんとの協働の取り組み、例えばケアタウンや地域コミュニティ、環境再生プロジェクト、生ゴミのリサイクルなども相当進んできています。
地域コミュニティ単位でのまちづくりも、多くの地区で地域別計画を踏まえた動きが始まっています。
また、昨年は「片浦レモンサイダー」のように無尽蔵プロジェクトでの民間の皆さんが主体となった地域振興の取り組みも様々な形で結実するなど、良い意味で 私の想定を超えた成果となり、非常に明るい話題となりました。このように、「新しい小田原」への作業は目に見えにくいかも知れませんが、様々な取り組みが 前に進んでいます。
明るい話題といえば、早川の一夜城ヨロイヅカファームのオープンもその一つです。鎧塚さんのような著名な方がお越し いただいたことは本当に我々にとっては嬉しいし、また励みになることでもあります。これも、地場の農産物を生かしたグリーンツーリズム事業という、二十年 来にわたって早川地区の方々がやってきた事業に鎧塚さんが着眼し、環境と人のすばらしさにひかれて出店を決めたというところが、非常に大事な点だと思いま す。今後も地元の素材を生かし、生産者と一緒に菓子作りがしたいと言っていただいており、地域資源を生かした発展が見込める、願ってもないありがたい話で す。11月の開店後は曜日に関係なく非常に繁盛しているようで、この調子でどんどん根付いて伸びていってほしいと思います。また、鎧塚さんに続く第二、第 三のいわゆる6次産業的な取り組みが市内各所で起こってくるよう、我々も手を緩めずにやっていきたいと思います」
〈続きは1月7日号で掲載の予定です〉
震災の影響や3大事業案件などについて約1時間にわたり
インタビューに答えた加藤市長
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