小田原版 掲載号:2014年1月1日号
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新春特別インタビュー 特集 医療・介護 身近な「かかりつけ医」こそ総合診療医 (一社)小田原医師会・横田俊一郎会長

新しい医療福祉会館について語る横田会長
新しい医療福祉会館について語る横田会長

 2014年、市内久野に「おだわら総合医療福祉会館」が開館する。館内は小田原医師会の他、社会福祉協議会、看護学校などが同居。市役所や市立病院とも隣接することから相乗効果も見込まれる。一方で、TPPや消費増税など、医療、保険、介護の分野を取り巻く環境も大きく変化を遂げる1年となりそうだ。そこで本紙では小田原医師会の横田俊一郎会長にインタビューを行い、小田原医師会の対応や今年の抱負などを伺った。

4月1日開館 おだわら総合医療福祉会館

 -あけましておめでとうございます。医療現場にとって2013年はどのような1年でしたか。

 「医療現場の面では、期待していた通りの年ではなかった気がします。

 そもそも今の国の財政状況で、診療報酬だけが伸びることができなくなっており、そこへきて診療報酬の削減をやってきた自民党に政権が交代したので、再び削減が繰り返されるのでは、という心配があります。日本の診療報酬は決して外国に比べて多いわけではないので、必要な費用がきちんと支払われるような政策をとってほしいと思っています。

 もう一つは交渉が始まったTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についてです。

 医療の自由化や、市場経済が持ち込まれることに、私たちは危機感を持っています。日本の医療制度の良さは、誰でもどこでも同じように一定の医療が受けられる保証があるところです。政府は『国民皆保険制度は崩さない』と言っていますが、TPPの交渉次第ではその根底を崩されかねません。日本の医療制度は世界で一番だと言われており、今の医療制度が崩れると、医療費の高騰や医療格差など、一般市民にしわ寄せがくることになります。そうならないよう医師会として言うべきことはきちんと言っていかなければなりません。

 昨年夏の参院選では、日本医師会の副会長が多くの得票を得て当選しました。医療の現場を知っている人たちが、ちゃんと政治の世界に声を届けてくれるよう期待しています」

 -インターネットでの薬販売の規制が話題となりましたが、医療現場における規制緩和の問題についてどう思われますか。

 「薬のネット販売は、便利さに潜んでいる危険にも注意を払わないと大きな事故になる恐れがあるので、良く考える必要があると思います。

 医療で儲けようとする考え、法に触れなければ何をしても良いという考えは医療現場にはそぐわないと思います。

 患者さんの病状や悩みにつけこんで商品を売りつけたり、必要のない治療や薬を処方する医師も少なからずいます。

 医師もすべてが良い人ばかりではないので、日本医師会も倫理規定を作ったり自浄作用を図るための委員会を作ったりしています。医師に対してちゃんと言えるのは医師しかおらず、いくら法律で縛っても他の人にはできないですから。

 資本主義は競争社会で悪いものが淘汰されるという考えで成り立っていますが、そうとは限りません。特に医療の面ではそうはならないと思います」 

 -4月にいよいよ『おだわら総合医療福祉会館』が開館します。どんなところに期待していますか。

 「立地場所が、小田原市の医療の中心である市立病院の目の前で、市役所にも近いので、地域の要として行政や市立病院との連携が深まってくれることを期待しています。駐車場も確保されていますが、小田急線の足柄駅や大雄山線の井細田駅からも近いので、歩いて利用するにも便利です。建物内には講堂や会議室も多数できるので、セミナーや勉強会などで使用してもらい、色々な人が集まる場所になればと思っています。建物は1月の末には完成・引き渡しの予定で、2、3月に引越し。4月初旬に開館の式典を予定しています。

 2校の看護学校のうち、現在久野の高等看護専門学校と城内の小田原看護専門学校の看護学科進学コース(准看護師が正看護師になる3年制コース)が新会館へ移転します。小田原看護学校の准看護学科(2年制)が新館に移動した高等看護専門学校の後に移転します。

 3年制の進学コースは、今春の入学生で最後となり、彼らが卒業する3年後で進学コースは廃止になります。しかし准看護師については、すぐに廃止するつもりはなく、情勢を見極めて、必要であれば養成を続けていきたいと考えています。

 特に介護の分野で准看護師は多数働いており、国は、2025年に団塊の世代が75歳以上になる時に向けて、高齢になっても病院ではなく、なるべく地域の中で暮らせる『地域包括ケア』のシステムを進めていますが、システム維持には准看護師の活躍がますます必要になるはずです。

 進学コースがなくなると同時に高等看護専門学校の定員を40人から80人に増やします。

 神奈川県は看護師が少なく、実は来年度から厚木を筆頭に、県内で看護学校がいくつか開校する予定です。看護師の養成数も増え、良いことですが、学生たちの実習先が足りず苦労しています。

 特に小児科と産婦人科の実習先がなく、一つの医院に一度に何人もお願いをすることはできないので、市立病院などの総合病院にお願いすることになります。

 小田原でも産婦人科の実習先が足りず、秦野の赤十字病院にお願いしたりしています」

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 -社会保障費を支えることを目的に消費増税が行われますが、医療現場での影響はありますか。

 「増税自体は、社会保障費に回すということで、ある程度致し方ないと思います。ただ例えば、小児科の立場で言えば、子どもの保育園の問題とか予防接種を増やすとか定期接種化するとか、きちんと増税分が国民の命を守るために使われていることが目に見える形にしてほしいと思います。ただ上がっただけで訳が分からない使い方というのは、やめてほしいです。

 消費税について、医療費は原則非課税になっています。医療費にも同じように消費税が課税されると、医療の手控えになってしまい、必要な受診が遅れる懸念があるので、それはぜひ避けて欲しいと思います。

 現在、医療費は消費税非課税ですが、私たち医師が医療・治療のために購入する器具や薬品には消費税が加算されています。これらを治療で患者さんに使った場合、患者さんからいただき、納税することになるはずですが、患者さんから消費税分はいただいていません。診療報酬に組み込まれていることになっていますが、見合った引き上げもなく、実際には払った消費税が還付されず、医療機関の負担になっている部分が多くあります。開業医はそうでもありませんが、大きな病院では負担が大きく、赤字に転落するところもあるほど経営を圧迫してしまいます。

 そのため消費税課税はするけれど税率ゼロにして欲しいと日本医師会では要望しています。非課税では還付がありませんが、『ゼロ課税』であれば還付が可能になります。非課税もゼロ課税も患者さんにとっては一緒ですが、私たちにとっては大きな違いがあります。残念ながら今回の増税のタイミングで、ゼロ課税は認められませんでしたが、引き続き要望していくつもりです」

 −地域医療を守るという意味では「かかりつけ医」の存在はやはり大きいと思いますが。

 「何でも相談できる、かかりつけ医を持つことはとても大切です。特に身体全体を見てくれる医者が必要だと思います。

 かかりつけ医を身近に持ってもらうために、小田原医師会では、市民向けの講演会やセミナー、合唱団や地域医療連携室の活動など医者が患者さんに身近に感じてもらえる様な活動を続けています。ただそれだけではすべての人をカバーできないので、小さい時から医療のかかり方というのを学校の教育で教えてもらって、医者にもっと気軽にかかっていいんだ、心配ごとがあったらまずは相談、と言う関係になったらいいのかなと考えます」

 一方で『総合診療医制度』が2015年度からスタートする予定です。
 医療現場には、専門医制度というのがあり、医師は内科や外科といった専門医をひとつ持つことができます。その一つに総合診療医が入ってきます。

 日本プライマリー連合学会というところが中心になるということで活動していますが、医療費の無駄をなくすため、国は総合診療医をたくさん作り、病気の際、いきなり総合病院にかかるのではなく、まず総合診療医にかかる仕組みにしたいと考えています。今はフリーアクセスの状態ですから、たとえ軽い病気でも、大病院の専門医に行くことも可能です。

 最初にかかりつけ医に行って、病状に応じて専門医にかかるシステムにすることで無駄な医療費をなくしたいという考えは、決して悪いことではありません。しかし最初は『総合診療医にしかかかれません』と決めてしまうと、これまでかかっていた病院や好きな医院にかかれなくなるなどの支障もきたしますし、国が思うようにはいかないのではないかと、懸念しています。

 また専門医は一つしか取れないため、最初にかかる総合診療医に集中すると、例えば小児科などはなり手がいなくなるのでは、と危惧しています。

 国は総合診療医にかからせる形をとることでその医師をかかりつけ医にしようとしているのでしょう。ただ、地域で開業している医師は総合医として働いています。例えば小児科では子どもだけでは来院しませんから、子どもの病気を診るだけでなくお母さんの健康状態もチェックしますし、相談も受けています。なので、新しい制度にすることで、すでに、かかりつけ医になっている、懇意にしている医院にかかれなくなる、ということにならないようにしてほしいと思います。

 イギリスなどでは総合診療医制度が破綻していますし、フリーアクセスは医療費の無駄も確かにあるのですが、良いところもたくさんあるので、その良い面も見直して、保持していくということも必要なのではないでしょうか」

 −2014年の活動方針や抱負をお聞かせください。

 「新しい医療会館ができるので、拠点にして、活動の輪が広がり行政や他の団体との連携が広がってくれるといいな、と考えています。私たち医師会の活動は、お互いの医療関係者や住民のことをよく知るということが大切ですので、さらに進めていきたいと思います。そのために会館を上手に使って進められたらと思う。住民の人にも関心を持ってもらって、足を運んでもらえるように企画を検討中です」

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星槎国際小田原 4月1日開校

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