神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS

連載【3】 支援の輪 手から手へ 故郷は近けれど遠きもの

公開:2014年1月25日

  • X
  • LINE
  • hatena
船が放置されたままの浪江町請戸。右奥が福島第一原発の煙突
船が放置されたままの浪江町請戸。右奥が福島第一原発の煙突

 小田原から南相馬へクリスマスツリーが届けられた2013年末。ツリーを囲み両市民の交流が行われた後、コミュニティ施設「浮船の里」の代表・久米静香さんに、まちを案内してもらった。

 「浮船の里」は福島第一原発から約15Km、福島県南相馬市小高区にある。付近一帯は避難指示解除準備区域。住民は、昼間は自宅へ帰ることができるが、夜は再び避難場所へ戻らなければならない。

 「小高は歴史のある静かなまちでね。住みやすい場所だったのよ」。運転席の久米さんが話し始める。小高区では、2016年4月に住民の帰還を目指し、現在除染作業が進められている。田んぼには未だに津波で流された車が残り、がれきも道端に寄せ集められただけの状態だ。

 国道6号線を南下し、海岸沿いへ。

 浪江町請戸地区。津波が、そこに住む人々のすべてを奪っていった。夏にはセイタカアワダチソウが一面に生い茂り黄色い絨毯に覆われたという場所も、今は枯草の間から船やがれきがのぞく状態。「ここからだと見えるのよ」と、久米さんの指差す先には、更地越しに福島第一原発の煙突がそびえる。被災地に広がる更地は、ただの空き地ではない。残る家の土台が物語るのは、かつてそこで暮らした人の生活の跡だ。

 しばらく走ると、津波にのまれそのままになった家の玄関先に、泥をかぶり、時が止まった時計が置かれていた。長い時間直視できず目を転じると、請戸小学校の校庭には、うず高く積まれた車。「あの近くにはどうしても近寄る気になれなくて」と久米さんは遠くに目をやった。

 浪江から小高に戻る道すがら、出会った住民は1人だけ。人の気配が無いまちには、呼吸も温度も感じられない。

 原発事故の影響で一部区間が運転見合わせとなっている常磐線の小高駅に車を寄せた。改札脇に整然と並ぶ自転車。あの日、いつもと同じように電車に乗って向かったのは、学校か職場か。いつか持ち主が帰ることを、心から祈らずにはいられなかった。

 震災直後から今までの日々を「私たちはずっと『逃げて』きた。放射能の恐怖から逃げ続けてきたの。最初は東電憎し、だったけど今はこれ以上悪いことが起きないよう頑張ってほしいと思う」。淡々と話す久米さんに、かける言葉がみつからない。家の裏手に続く桜並木の土手を見つめながら「故郷はなくなっていない。戻りたいのよ」と語る横顔は穏やかだが切なげだった。

浮船の里代表の久米静香さん(前列左)
浮船の里代表の久米静香さん(前列左)

小田原・箱根・湯河原・真鶴版のローカルニュース最新6

5度の荒行を成満

5度の荒行を成満

法船寺の下津住職

3月23日

新坂下トンネル工事を見学

新坂下トンネル工事を見学

市内の児童らが参加

3月23日

山焼きで景観維持

山焼きで景観維持

仙石原すすき草原

3月23日

ラグビー公式戦無料招待

ラグビー公式戦無料招待

城山競技場で3月31日

3月23日

小田原の声楽家 西由起子さんが企画

星野富弘 花の詩画展 開催記念コンサート 3月27日三の丸ホール

小田原の声楽家 西由起子さんが企画

3月23日

クリニック併設 安心の住まい

クリニック併設 安心の住まい

23日・24日 試食付き見学会

3月23日

あっとほーむデスク

  • 3月23日0:00更新

  • 3月16日0:00更新

  • 3月2日0:00更新

小田原・箱根・湯河原・真鶴版のあっとほーむデスク一覧へ

バックナンバー最新号:2024年3月23日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook