10月10日付けで、神奈川県警から「スーパー駐在」に指定された 佐野 修さん 小田原署湯河原駐在所 59歳
三味線片手に地域を守る
○…「スーパー駐在」とは、特殊技能を生かして地域で活躍する駐在の警察官のこと。10月10日、横浜市中区の県警本部で指定書の交付を受けた。「驚いたし、本当は恥ずかしいんだ。本分は警察官だからね」。特殊技能は三味線。小山竜修(りゅうしゅう)の名を持つ、名取である。
〇…三味線との出会いは川崎の納涼祭。成田闘争の鎮圧に明け暮れていた当時、ふと耳にした三味線の音色で、母が習っていた民謡の調べが脳裏によみがえった。これが師匠・小山貢竜(みつりゅう)さんとの出会いだった。3年後に弟子入りを果たして以来修練を重ね、2002年には津軽三味線の全国大会で入賞するほどの腕前に上達した。
〇…普段は湯河原町宮上の駐在所を守る。温泉旅館が立ち並ぶ土地柄のせいか、忙しくなるのは泊り客の出発・到着時間に集中。日中は近所の人が顔を出し「誰々さんの家の戸が閉まりっぱなしなんだけど」、「さっきのは病院に行ってたんだって」と声をかけていく。地域に溶け込みながらも保つべき距離を保ち、信頼関係を築きあげた。
〇…柔道で鍛え上げた堂々たる体躯で、さまざまな趣味を楽しむ。最初の赴任地・鎌倉では「メッカだもの、やらない手はないでしょ」とサーフィン。小田原署に異動してからは、ハーレーダビッドソン。中年男性25人からなる「熱海ハーレー会」の仲間と、遠くは京都まで出かけたこともある。ピカピカの愛車に黒の革パンツでキメながら、スピーカーから流れるのは「じょんがら節」。どこまで行っても三味線命の様子が微笑ましい。
〇…一人暮らしの老人が出かけるきっかけになればと、老人会や地域の納涼祭でも三味線を披露してきた。あくまでも「本分は警察官」。地域安全の貢献に、と振り込め詐欺への注意呼びかけや交通安全講話なども忘れない。「こうして距離が近づけばこそ、呼びかけたことも生きるはず」。スーパー駐在の腕の見せ所だ。
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