小田原地区保護司会の会長を務める 渡邉 俊之さん 市内酒匂在住 69歳
心優しき皆の親父
○…犯罪や非行に陥った者の更生を支援する保護司。「彼らは少年院や刑務所でさんざん説教を受けてきているはず。だからこそ、我々は上から目線で物を言うのではなく、かといってへりくだることもせず、ひとりの人間として対等に接することが大切」。そんな努力の甲斐むなしく、2度、3度と罪を繰り返す者も少なくない。それでも、「正しい道に導き、痛ましい事件をひとつでも未然に防ぐことが保護司の役目。相手を信じ、あなたの応援者であるという姿勢でいたい」と話す目が優しい。
○…小学生の頃、父子家庭のため孤児院に入所している同級生がいた。「週末だけ父親が学校に迎えに来るのだけれど、その時の彼のうれしそうな表情が本当に印象的で」と当時を思い出し、涙で言葉を詰まらせる。祖父母、両親、兄弟と一つ屋根の下で暮らす自身と比べ、世の中には複雑な境遇に生きる人もいる。自分にとって当たり前だった暮らしが、誰にとっても同じではない。子ども心に知った何気ない現実が、保護司として30年以上に渡り人の人生に寄り添ってきた活動の原点でもある。
○…薬物、窃盗、傷害――。保護司として接する相手は犯罪歴も年齢もさまざま。固く心を閉ざし、会話が成り立たないこともあるが、そんな時は無理せず食事にでも誘う。すると、一緒にラーメンをすするうちに、「親父みたいな年齢の人と食べるのは久しぶりだな」など、ポツリと本音を漏らす瞬間がある。「どんなに強がっていても、誰でも優しい心がある。それを確認できるのがうれしい」
○…明治生まれの祖父母はかつて、親のいない子どもたちを預かり、生活をともにしていたと聞く。「今思えば、そんな背中を追っていたのかな」。保護司の定年は75歳。「それ以降も、困ったことがあればいつでも頼ってもらえる駆け込み寺のような存在でいたい」と、生涯を通じて保護司の精神を貫く覚悟だ。
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