語り継ぐ戦争の記憶 ―シリーズ 終戦70年㊵―

社会

掲載号:2015年11月28日号

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小林 晃治さん(78)1937年生まれ 市内南鴨宮在住
小林 晃治さん(78)1937年生まれ 市内南鴨宮在住

 終戦70年を迎える今年、小田原に残る戦争の記憶を、人・もの・場所を介してシリーズで綴る。第40回は、小田原空襲で自宅兼店舗が全焼した、グンジンヤの小林晃治さん。

 戦前は駅前よりも活気があったという青物町で、洋品店を営む家庭に11人兄弟の8番目として生まれ育った小林さん。住み込みの従業員やお手伝いさんもいる、賑やかな家だった。

 だが戦争が始まると、ただでさえ食糧難のなか、大家族であるがゆえ、その厳しさはなおさら。両親が「売るほどあった」という衣類を農家や漁師と物々交換したり、酷い時はサツマイモのツルまで食べて飢えをしのいだ。「空腹に耐えかね、自宅裏にあった大きな防空壕に常備していた缶詰をくすねて、石で釘を打って開けて食べた。そうしたら兄もやっていてね」と苦労を語る。

 1945年夏。当時城内国民学校2年生だった小林さんは夏休みということもあり、南足柄の猿山(現・広町)の知人宅に、姉と弟、妹の5人で疎開していた。8月15日未明のこと。「空襲で小田原が燃えている」という声で目を覚まし、田んぼの畦道に兄弟で並んで見た光景は今も忘れられない。「海の方が焼夷弾で赤く燃えていて、花火のようにとてもきれいだった」

 終戦直前に「米軍が爆弾を捨てていった」とも言われ、約400軒が焼失、12人が命を落とした小田原空襲。「まさか自分の家が巻き込まれているとは、その時点では思いもしなかった」。夜が明け、疎開先にやってきたお手伝いさんから家が空襲にあった事実を知らされた。家族や従業員らは、幸いにも空襲から逃れ全員無事だった。しかし家は跡形もなく、辺り一面焼野原と化していた。

 終戦を迎え「住む場所がないことには」と、父が出入りの職人たちに頼み「バラック小屋みたいなものだが、あっという間に家が建った」。兄弟で押し入れにぎゅうぎゅうで寝たこともあったが「住む場所があるだけ良かった」と振り返る。

 「本当に大変な時代だったけれど、みんな活力に溢れハングリーだった。やはり戦争はやっちゃいけないよ」。平和な時代になお残る『グンジンヤ』の店名には、戦争の記憶を風化させてはならぬとの思いも託されている。

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