観光の目玉・小田原ブランド
――小田原ブランドの観光面での生かし方は。
「2016年は、観光面で具体的な事業の推進が重要なテーマになってくると考えています。
今年の春先までに小田原市の観光戦略ビジョンを取りまとめ、新年度以降は、このビジョンに沿って具体的な事業に着手していきます。特徴をはっきりさせた観光拠点の整備、物産や商品の開発、情報の発信など、テーマを持って取り組む重要な年になると思います。
昨年、地方版総合戦略を作りました。また今年はおだわらTRYプランの後期基本計画の策定作業が本格化します。経済政策の中で、観光をどうするか、小田原の何を魅力として発信し、どこに観光客に来てもらい、どこでお金を使ってもらうか、よりはっきりさせる必要があります」
――外国人誘客についてはいかがでしょうか。
「インバウンドは、本市の観光にとって重要な切り口です。小田原は、都心からも近く、東京から一番近い城のあるまちでもあります。食べ物や自然環境、歴史、文化などコンテンツは一通り揃っており、他都市に比べてもアドバンテージのあるまちだと考えています。
しかし行政ができる対応は限られており、『おもてなし』をするには民間の協力と参画がないとできません。民間とのコラボレーションは重要なテーマです。
観光協会は箱根と小田原で分かれていますが、商工会議所は一体なので、大涌谷の火山活動を受け、箱根を核とし、小田原を含めた観光圏の充実を民間と一緒にやっていくことになります。観光戦略ビジョンと地方版総合戦略をもとに、小田原と箱根の連携をしっかり図っていきたいと考えます。
箱根を訪れたお客さんが小田原駅の西口に観光バスをつけ、すぐ東京や京都に行ってしまわないよう、東口に回って小田原城や街なかに寄っていただけるよう、回遊のルート作りなどといった仕組みを作っていく必要もあります」
――小田原城の耐震改修等工事がいよいよ終わります。
「小田原城は、外回りの化粧直しに加え、中の展示内容も変わるので、全く新しくなります。
ゴールデンウィーク中の5月1日にリニューアルオープンの予定ですが、オープンに向けたPRや盛り上げ方について、現在戦略を立てている段階です」
ラグビーの街「小田原」へ
――2019年のラグビーW杯に向け、小田原が日本代表の合宿地に決まりました。どのようにまちの活性化に生かしますか。
「まず、昨秋のW杯イングランド大会で日本代表が感動的な試合を見せてくれたのが大きな追い風になっています。ルールが解らなくてもワクワクするようなスポーツが身近に来る、ということは、人間の能力の開発やスポーツの振興、健康の増進、教育面などで大きな効果があると考えます。
また、ラグビーファンは熱心な人が多いと言われており、全国から日本代表の練習を観戦に来る人も多くいると思われ、それらの受け入れの需要も見込めます。加えてラグビー関連グッズの販売、応援や観戦などは、様々な経済行為を伴うわけで、そのマーケットが確実に出てきます。
さらにはラグビーが盛んで、皆でラグビーを盛り上げている、ということが大きな意味での都市イメージの醸成につながると考えます。経済効果は図りにくいですが、そういうプラスのイメージ作りに大きく寄与してくれると思います。
直接消費にはつながらないかもしれませんが、ラグビー人口が増えることによる活性化もあげられます。小田原市は、小学生がタグラグビーをやっており、裾野があります。小田原ラグビー協会も立ち上がり、子供達のスクールも動いていくので、裾野を広げながら、この追い風を最大限に受けとめる取り組みをやっていこうと考えており、世代や立場に関わらず、賛同してもらえると思います」
――日本代表の合宿決定に合わせ、城山陸上競技場が改修されますが、競技場の使用や工事期間中の利用はどのようになりますか。
「代表チームが来るから使えなくなる、ということがないよう協会と各団体でスケジュール調整します。
改修工事は、管理棟の更衣室やシャワー室の機能改善、老朽化したトイレを新しくするなど、ラグビーのためだけでなく、老朽化した諸施設の維持改修という面が強いので、諸団体にとっても使いやすくなる整備になります。
整備に関する予算は、5〜6億円といわれています。一般財源では中々捻出できない金額ですが、ヒルトンの売却益を使い、新たなスポーツ振興と教育に関する基金を立ち上げたので、これを使って整備していきます。ラグビー日本代表の合宿地に選出されたことが、大きなきっかけとなり、思い切った整備に踏み込むことができるともいえます」
中核市移行と合併
――小田原市の総合戦略についてお聞かせください。
「小田原市の総合戦略は幅広く、中身も多岐にわたるものとして構築しました。いわゆる『産官学金労』等、色々な方に参画いただき、相当盛りだくさんの内容になっています。
総合戦略にちょうど重なるように、2017(平成29)年度からスタートするおだわらTRYプランの後期基本計画の策定が本格化します。この中では、どういった自治体を目指すのかを明確に謳わなければ、と思っています。
人口が減り、税収が減り、一方で高齢者が増え、介護医療費が嵩んでいく。財源は増えないので自治体の職員を増やして対応することもできないなど、基礎自治体は難しい局面にあります。そういう中で、誰がどうやって公共を支えるのか。行政だけでなく市民や事業主、民間が、どこをどうやって支えるのか、という議論をしっかりしなければならない局面に直面しています。そういった思いを持って総合戦略も書いていますし、TRYプランの後期基本計画も書いていきます。 その延長線上に、基礎自治体としてどうあるべきかという議論が出てきます。国は、厳しい基礎自治体の状況を見据え、可能な自治体はできるだけ中核市に移行して、合併をしなくても連携中枢都市として周辺の市町と連携をしていくことを推奨しています。
小田原市は、特例市制度が廃止(2015年4月)になった段階で、単独で中核市移行の準備を始めており、その議論を進めています。ただ、状況によって、周辺の市町との間で合併を検討すべきとなった場合には、真摯に議論していくとともに、検討作業を進めていく考えです。単独で中核市に移行するのか、合併という手段を含めて中心市として強化し、周辺の市町と連携していくのか、その辺の見極めをする重要な段階です。
中核市移行は人口20万人以上の都市という条件があり、もともと特例市だった小田原市の人口は現在20万人に満たないですが、2020年3月までという条件付きで中核市移行が可能です。人口が20万人を超えれば、その時間的制限が外れます。例えば、近隣の市町との間で合併協議の可能性があるのであれば、先にそちらを検討し、難しければ単独で中核市に移行するということもあるでしょうし、合併を先行して、中核市移行はその後に、など、様々な可能性があります。
2市8町での合併は、今は難しいと思いますが、中心市の強化ということでの合併は、具体的な選択肢としてはあると思っています」
――合併を小田原市から持ちかけるということはない、ということですか。
「かつては2市8町で一つに、という時期がありましたが、難しいのであれば中心市がしっかりし、広域連携できる枠組みを作り、連携中枢都市圏ということで国からバックアップを受け、効率化できる事業は自治体間で連携協約を結び、2市8町の圏域として何とかやっていける形を作るというのは、具体的な一つの道筋であると思っています。
合併を含め、中核市への移行は、市民の皆さんに今後どのように話していくかは考えていきますが、中核市に移行することで、単独の一般市でいるよりも、県や国から権限が移譲されるので、はるかに権能が上がってきますし、小田原で済むことが増え、効率的になるなど、市民生活にもメリットが多々あります。また事業推進にまつわる、国からのバックアップも得られやすくなります」
(1月15日号に続く)
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※中核市=政令指定都市以外の規模や能力が比較的大きな都市の事務権限を強化して、できる限り住民の身近なところで行政を行うことを目的として、1995(平成7)年に創設された都市制度。
指定の要件は、変更を重ね、2015年に人口20万人以上に緩和、同じ要件の特例市を廃止した。小田原市のように廃止前に特例市だった都市は、「施行時特例市」として、要件を満たさなくても5年以内(2020年3月31日まで)ならば中核市に移行が可能。