2016「木のクラフトコンペ」で大賞を受賞した 露木 和孝さん 市内本町在住 46歳
挑戦と継承の間で
○…「クラクラしそうな」という形容詞が思い浮かぶ木工作品は珍しいかもしれない。神代桂の黒と水草の白でモダンに仕上げた作品は、連続するいくつもの模様の組み合わせの妙で、渦が巻いているような錯覚に陥る四角の皿。4年後の東京五輪のエンブレムに決まった、市松模様から着想を得た。もともと目の錯覚を利用するトリックアートが大好き。「今度はガラッと印象を変えて」と、早くも第2弾、3弾の構想が進んでいる。
〇…早川の本家で働いていた父が独立して興した、「寄木細工のつゆき」の2代目。小学校時分から作業場に出入りしており、授業も図工が一番好きだったことから、家業に親しむのは早かった。大学の美術学部に進学後、「外の世界を見ろ」という父の勧めで、家具屋に勤務。2年を過ごし、師匠である父に弟子入りした。いまだ現役で昭和仕込みの仕事の早さの父を、「自分は超えられるのか」と、しばしば思う。
〇…千葉出身の妻と北海道で出会い、結婚。「どちらかと言えば次男の方が興味はありそう」という二人の息子には、家業を継ぐことは強要していない。よき父の顔を持ち、休日には家族そろってスーパーで買い物をするのが好き。家庭では、自ら出汁をとる得意の茶碗蒸しなど、「すが入っても気にしない」、おおらかな腕前を披露している。
〇…職人歴でも人生経験でも先輩のベテランや、切磋琢磨する仲間たちと酒を飲むのが楽しみ。話題にのぼるのは、土産物から脱却し「寄木細工を芸術品の域まで高めたい」という夢だ。現在開催中の「小田原・箱根『木・技・匠の祭典』」では、自身の受賞作をはじめ木を愛する作り手たちの力作が並ぶとともに、組木やからくり細工の名手の実演会もある。「受け継がなければ消えてゆく技術がある。それをぜひ見てほしい」。20年以上のキャリアを堅実に積んできた、中堅の使命が見え隠れする。
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